ベンガルール

ベンガルール：インドのシリコンバレーと庭園都市の融合

ベンガルール（Bengaluru）は、インド南部カルナータカ州の州都であり、南アジアを代表する世界都市です。デカン高原南西部のマイソール高原に位置し、標高約920mの穏やかな気候から「インドの庭園都市」とも呼ばれています。800万人以上の人口を擁し、インド第3位、世界でも有数の大都市圏を形成しています。

歴史：泥の城壁都市からIT産業の中心地へ

ベンガルールの歴史は古く、9世紀にはすでにその名が記録に残されていますが、当時の人口は非常に少なかったとされています。1537年、ヴィジャヤナガル王国の領主ケンペ・ガウダ1世が泥の城壁都市を建設したことが、現在の都市発展の礎となりました。その後、マイソール王国の一部となり、首都として栄えました。

19世紀のイギリス植民地時代には、南インドにおける軍事・行政の中心地として発展。イギリス人居住区であるカントンメントが建設され、多くの労働者が他地域から流入しました。独立後、国営の重工業、航空・宇宙産業、防衛産業などが集積。1980年代以降の経済自由化と相まって、IT産業が急成長しました。世界的なIT企業の進出や優秀な人材の育成により、「インドのシリコンバレー」と呼ばれるまでに発展し、2004年にはインドのソフトウェア輸出の35%を占めるまでに至りました。

しかし、急激な発展に伴い、大気汚染、交通渋滞、スラム問題などの課題も抱えています。2005年には、都市名をカンナダ語表記の「ベンガルール」に改名しました。

地理と気候

ベンガルールは、マイソール高原の中心部に位置し、安定した地殻構造のため地震の発生は稀です。都市面積は約2,190平方キロメートル。平坦な地形が中心ですが、丘陵地帯もあり、多くの湖が点在しています。気候は高原特有の穏やかなサバナ気候で、夏は熱波が襲うこともありますが、年間を通して比較的過ごしやすい気候です。雨季と乾季がはっきりしており、特に9～10月が最も降水量が多いです。

経済：IT産業を筆頭とする多様な産業

ベンガルールは、多様な産業が発展しているインド有数の経済都市です。特にIT産業が中心で、多くのグローバル企業やインド企業が本社や開発拠点を構えています。インフォシスやウィプロといったインドを代表するIT企業もベンガルールに拠点を置いています。

そのほか、航空宇宙産業、防衛産業、バイオテクノロジー産業なども盛んであり、国営の重工業企業の本社も多く集まっています。これらの発展は、高度な教育機関の存在と優秀な人材の育成が支えています。ベンガルール近郊には、IT企業向けの工業団地が複数整備されており、インフラの充実も進んでいます。しかし、急激な都市化に伴い、交通渋滞やインフラ整備の遅れといった課題も残っています。

文化：歴史と現代が融合する都市

ベンガルールは、緑豊かな都市公園が多く、その美しい景観から「インドの庭園都市」として知られています。ヒンドゥー教の祭典であるディーパーヴァリーやダサラといった伝統的な祭りが盛大に開催され、活気のある文化が息づいています。カンナダ語映画産業の中心地でもあり、独自の若者文化も育まれています。多様な料理が楽しめる飲食店も豊富で、インド料理をはじめ、中華料理や西洋料理なども楽しめます。ナイトライフも盛んで、クラブやバーが多く、若者を中心に賑わっています。

スポーツ：クリケットが圧倒的な人気

ベンガルールでは、クリケットが最も人気のあるスポーツです。インディアン・プレミアリーグ (IPL) のロイヤル・チャレンジャーズ・バンガロールは、地元で高い人気を誇り、多くの有名選手を輩出しています。サッカーも盛んで、インディアン・スーパーリーグ (ISL) のベンガルールFCも活躍しています。

交通：空路、鉄道、道路網

ベンガルールには、ケンペゴウダ国際空港があり、国内外へのアクセスが容易です。インド各地と結ぶ鉄道網も整備され、市内には複数の鉄道駅があります。市内交通としては、バス、タクシー、オートリクシャーなどが利用できます。地下鉄も整備が進み、交通網の充実が図られています。

教育：高度な教育機関の集積

ベンガルールは、インドを代表する高等教育機関が数多く集積しています。インド理科大学院、インド経営大学院バンガロール校、国立法科大学など、国内外から多くの学生が集まります。これらの教育機関が、IT産業をはじめとする各産業の発展を支えています。

まとめ

ベンガルールは、歴史と現代が融合し、伝統と革新が共存する、インドを代表するダイナミックな都市です。IT産業の中心地として世界的な名声を獲得する一方、「インドの庭園都市」としての緑豊かな環境も持ち合わせています。急速な発展に伴う課題も残されていますが、これからもインドの成長を牽引する中心都市として発展していくことでしょう。

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