ベントズ・オールド・フォート国立史跡

ベントズ・オールド・フォート国立史跡：サンタフェ貿易路の要衝

コロラド州オテロ郡に位置するベントズ・オールド・フォート国立史跡は、19世紀におけるアメリカ西部の歴史を語る上で重要な場所です。サンタフェ貿易路の中継点として栄え、様々な人々が行き交い、時代の変遷を肌で感じることができる史跡として知られています。

ベント兄弟と交易所の設立

1833年、チャールズとウィリアムのベント兄弟は、ビジネスパートナーであるセラン・セント・ブラインとともに、この地に日干し煉瓦造りの砦を建設しました。この地は、アメリカとメキシコを繋ぐサンタフェ貿易路の要衝であり、周辺に住む様々な部族のインディアンとの毛皮交易を行うのに最適な場所だったのです。ベント兄弟はインディアンとの良好な関係を築いており、特にシャイアン族との交流は深かったと伝えられています。

サンタフェ貿易路の心臓部

ベント砦は、急速に発展するサンタフェ貿易路において、重要な交易拠点となりました。北にはセント・ブライン砦、南にはアドビ砦など、広範囲に及ぶ交易ネットワークを形成し、メキシコ領内にも支店を持つ一大企業へと成長していきました。シャイアン族、アラパホー族、ユテ族、アパッチ族、コマンチ族など、様々な部族のインディアンが、バッファローの毛皮などを持ち寄り交易が行われました。罠猟師たちもこの地を訪れ、毛皮交易は盛況を極めました。

ミズーリ州とメキシコ間の交易において、ベント砦は入植者にとって唯一の交易拠点でした。広大な砂漠の中にあるオアシスのような存在であり、探検家、冒険家、そして米軍兵士など、多くの旅人にとって、食料、水、休憩、安全を提供する重要な場所だったのです。馬車の修理や家畜の世話なども行われ、旅の安全と快適さを支える役割を果たしました。

米墨戦争とゴールドラッシュ

1846年に勃発した米墨戦争では、ベント砦はアメリカ軍の司令本部として接収されました。その後、1849年にはカリフォルニアでゴールドラッシュが起き、多くの金鉱掘りたちがこの地を通過するようになりました。しかし、ゴールドラッシュによる白人の流入は、インディアンとの摩擦を激化させました。バッファローの乱獲など、環境破壊も進みました。

この激動の時代の中で、チャールズ・ベントは「タオスの反乱」で命を落とします。ウィリアム・ベントは、アメリカ軍とインディアンの板挟みとなり、苦境に立たされました。最終的に、アメリカ軍に砦を売却しようと試みましたが、提示された金額は低額で、ウィリアムはこれを拒否しました。結果として、アメリカ軍はウィリアムを「不法占拠者」として扱いました。

1849年の夏、ウィリアム・ベントは、砦を放棄し、火を放って破壊しました。

国定史跡としての保存

1960年6月3日、この地は国定史跡に指定され、12月19日には国定歴史建造物にも指定されました。発掘調査や歴史資料を元に、1976年には砦が再建され、現在も当時の様子を伝える貴重な場所として保存されています。考古学的な発掘調査、オリジナルのスケッチ、絵画、日記などが再建に役立てられました。ベントズ・オールド・フォート国立史跡は、アメリカ西部の歴史、そしてインディアンとの関係、開拓時代の厳しい現実を垣間見ることができる、重要な場所となっています。

もう一度検索