ベン・ウェブスター

ベン・ウェブスター：ジャズ界のブルート

ベン・ウェブスター (1909年3月27日 - 1973年9月20日) は、アメリカ合衆国のジャズ・テナーサックス奏者。力強い音色と独特のうねるような演奏スタイルで、「ザ・ブルート」(荒くれ者) や「フロッグ」(カエル) の愛称で親しまれました。レスター・ヤング、コールマン・ホーキンスと共に、スウィング時代の三大テナーの一人と数えられています。

音楽的特徴

ウェブスターは、力強いストンプのリズムと、時に鋭く、時に温かみのあるバラード演奏を巧みに操りました。そのスタイルは、彼自身大きな影響を受けたというジョニー・ホッジスを彷彿とさせます。独特のうねりのある音色は、他のテナー奏者とは一線を画し、彼のトレードマークとなりました。激しい演奏から繊細なバラードまで、幅広い表現力を持ち合わせていたことが、彼の音楽の魅力です。

生涯とキャリア

ミズーリ州カンザスシティ出身のウェブスターは、幼少期からピアノとヴァイオリンを習得。その後、サックス奏者としてキャリアをスタートさせます。バド・ジョンソンからサックスの指導を受けた彼は、レスター・ヤングが所属していたヤング・ファミリー・バンドに参加。ジャズミュージシャンの集まるカンザスシティで、音楽的才能を磨いていきました。

1932年には、ベニー・モーテンの伝説的なバンドに参加。カウント・ベイシー、ウォルター・ペイジなど錚々たるメンバーと共に演奏しました。その後も、アンディ・カーク、フレッチャー・ヘンダーソン、ベニー・カーター、キャブ・キャロウェイといった著名なバンドを渡り歩きます。

デューク・エリントン楽団での活躍

1935年にデューク・エリントン楽団と初共演を果たしたウェブスターは、1940年までにエリントン楽団の主要なテナーサックス奏者として確固たる地位を築きました。ジョニー・ホッジスと共に、楽団の黄金時代を支えた一人と言えるでしょう。「コットン・テール」「オール・トゥー・スーン」など、数々の名演を残しています。ジミー・ブラントンとのコンビは「ブラントン＝ウェブスター・バンド」と呼ばれ、絶大な人気を博しました。

しかし、エリントンとは確執があったとも伝えられており、1943年に楽団を離脱します。この理由については諸説ありますが、エリントンのスーツを切り裂いたという逸話も存在します。

エリントン楽団以降の活動

エリントン楽団脱退後、ウェブスターはニューヨークの52丁目で活動を続け、リーダーやサイドマンとして数多くの録音を残しました。レイモンド・スコット、ジョン・カービー、シド・キャレット、ジェイ・マクシャン・バンドなど、様々なミュージシャンと共演しています。1948年には短期間ながらエリントン楽団に復帰。オスカー・ピーターソン、ハリー・スウィーツ・エディソンらとの共演を通じて、「ジャズ・アット・ザ・フィルハーモニック(JATP)」にも参加、ツアーや録音活動に携わります。コールマン・ホーキンスとの共演作「コールマン・ホーキンス・エンカウンターズ・ベン・ウェブスター」はジャズ史に残る名盤となりました。

また、アート・テイタムとの共演も有名です。1950年代には、正統派スタイルの録音を残しています。

晩年とヨーロッパでの活動

1964年、ウェブスターはヨーロッパに移住し、主にヨーロッパで活動の場を設けます。ロンドン、アムステルダム、コペンハーゲンなどを拠点に、自身のペースで演奏を続けました。1971年には、デンマークのチボリ・ガーデンで行われたショーで、デューク・エリントンと再会し、再び共演を果たしています。

1973年、デンマークで死去。

ディスコグラフィ

リーダーアルバム、参加アルバムを多数発表。代表的な作品として、『キング・オブ・テナーズ』『ミュージック・ウィズ・フィーリング』『コールマン・ホーキンスとベン・ウェブスター』などがあります。彼の作品は、ジャズファンにとって貴重なレガシーとなっています。

まとめ

ベン・ウェブスターは、その力強い演奏と独自の音楽性で、ジャズ史に燦然と輝く偉大なテナーサックス奏者です。彼の音楽は、時代を超えて多くのジャズファンを魅了し続けています。彼の生涯と音楽を振り返ることで、ジャズの歴史の一端に触れることができるでしょう。

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