ペイル・ブルー・ドット

ペイル・ブルー・ドット：遥かなる宇宙から見た地球

「ペイル・ブルー・ドット」（Pale Blue Dot）は、1990年にボイジャー1号が撮影した、地球の有名な写真です。撮影当時、ボイジャー1号は約60億キロメートルという、想像もできないほど遠い距離に位置していました。この写真は、太陽系家族写真の一枚として撮影され、広大な宇宙空間における地球の存在を、文字通り「点」として捉えています。

撮影の背景

ボイジャー1号は、1977年にNASAによって打ち上げられた探査機で、その主な目的は太陽系の外惑星領域、そして最終的には星間空間の観測でした。34年以上にわたり、ボイジャー1号は地球からの指令を受け取り、貴重なデータを送信し続けました。そして、太陽系の外へと旅立った初めての探査機であり、地球から最も遠く離れた人工物となりました。

当初のミッションを終え、太陽系を離れようとしていたボイジャー1号に、カール・セーガンの提案により、地球を振り返って撮影する機会が与えられました。セーガンは、この写真が科学的な価値は小さいかもしれないが、宇宙における地球の存在を認識する上で、重要な意味を持つと信じていました。

撮影の実現

NASA内部では、地球を撮影することによるカメラへの悪影響を懸念する声もありました。しかし、当時のNASA長官リチャード・トゥルーリーの尽力により、撮影は実現しました。

1990年2月14日、ボイジャー1号は、太陽系の惑星の写真を撮影する指令を受けました。キャンディー・ハンセンとキャロリン・ポルコを中心とするチームが、撮影の計画と露光時間の計算を担当しました。そして、撮影された写真の中に、灰色がかった背景の中に、薄暗い青色の点として地球が写っていたのです。

写真の意味

この写真は、単なる記録写真以上の意味を持っています。それは、宇宙における地球の小ささ、そして人類の存在の儚さを認識させてくれるものです。セーガンは、著書『惑星へ』の中で、この写真について深く考察し、人類の未来に対する希望と警鐘を鳴らしました。

光の偏波と散乱

地球が青く見えるのは、大気による光の散乱（レイリー散乱）が主な原因です。また、地球に反射した光の偏波も、この写真の色合いに影響を与えています。雲量や地表の状態など、様々な要因が複雑に絡み合い、地球を「ペイル・ブルー・ドット」として描き出しているのです。

撮影に使用されたカメラ

撮影には、ボイジャー1号に搭載された狭域カメラが使用されました。このカメラは、特定の目標の詳細を撮影するために設計されたもので、マリナー計画で使用されたカメラを改良したものです。撮影は、青色、緑色、紫色のフィルターを使用し、それぞれのフィルターに対して異なる露光時間で行われました。

その後

ペイル・ブルー・ドットを含む太陽系家族写真の撮影後、ボイジャー1号は、星間空間でのデータ収集に専念するため、カメラの電源を切るように指令されました。しかし、この写真は、人類の宇宙に対する認識を大きく変え、後世に語り継がれることになったのです。

「ペイル・ブルー・ドット」は、私達の故郷である地球を、そしてそこに生きる私達自身を、謙虚に見つめ直す機会を与えてくれる、象徴的な一枚なのです。

関連情報：
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