リチャード・トゥルーリー

リチャード・H・トゥルーリー：軍人、宇宙飛行士、そしてNASA長官

リチャード・ハリソン・トゥルーリー（Richard Harrison Truly、1937年11月12日 - 2024年2月27日）は、アメリカ合衆国の傑出した人物です。海軍軍人、宇宙飛行士としての輝かしい経歴を持ち、最終階級は海軍中将にまで昇りつめました。彼は戦闘機の操縦士としても、NASA長官としても重要な役割を果たしました。

生い立ちと軍歴

ミシシッピ州ファイエットで生まれたトゥルーリーは、幼少期からボーイスカウト活動に熱心に取り組み、最高位であるイーグルスカウトを獲得しました。1959年にジョージア工科大学で航空工学の学士号を取得後、海軍に入隊。海軍航空隊での訓練を経て、1960年に正式にパイロットとなりました。第33戦闘飛行隊に配属され、F-8クルセイダーでの飛行を重ね、300回以上の着艦を成功させました。

1963年から1965年まで、彼はアメリカ空軍のテストパイロット学校に在籍し、操縦技術をさらに磨きました。その後、教官として後進の指導にもあたりました。

NASAでの活躍

1965年、トゥルーリーはアメリカ空軍の有人軌道実験室計画における初の軍事宇宙飛行士に選ばれました。その後、計画の中止を経て1969年にNASA Astronaut Corpsに加わりました。NASAでは、宇宙飛行士の支援業務や、スカイラブ計画、アポロ・ソユーズテスト計画でのCAPCOM（宇宙船通信担当官）を務めました。

1977年には、スペースシャトルのオービター試験機エンタープライズでの着陸試験に参加。1981年のミッションSTS-2では、自身の誕生日に宇宙へ飛び立つという、記録にも残る宇宙飛行を達成しました。1983年のSTS-8では船長を務め、その手腕を発揮しました。

チャレンジャー号事故後のNASA復帰と長官就任

STS-8の後、トゥルーリーはNASAを離れ、海軍宇宙司令部の初代司令官に就任しましたが、チャレンジャー号爆発事故を受け、1986年にNASAへ復帰。副長官として、スペースシャトルの飛行再開に向けた陣頭指揮を執りました。事故原因の究明、機体の改修、そして将来の宇宙開発計画の策定に尽力し、1988年のSTS-26でのディスカバリーの飛行成功に大きく貢献しました。

1989年5月、トゥルーリーは第8代NASA長官に任命され、1992年5月までその重責を担いました。長官在任中には、カール・セーガンとの間で、ボイジャー1号による地球の写真撮影を巡る議論を仲裁したエピソードも残っています。この時撮影された「ペイル・ブルー・ドット」は、人々に深い感銘を与えました。

NASA退任後

NASA長官退任後、トゥルーリーはジョージア工科大学のGeorgia Tech Research Instituteの所長を務め、その後、国立再生可能エネルギー研究所の所長、ミッドウェスト研究所の上級副社長を歴任しました。2007年には、地球温暖化が国家安全保障に及ぼす脅威について、アメリカ合衆国上院外交委員会で証言を行いました。

受賞と栄誉

その功績を称えられ、防衛殊勲章、レジオン・オブ・メリット、殊勲飛行十字章など、数々の勲章を受章しました。また、NASAからもNASA Distinguished Service Medalなど、複数のメダルが授与されています。1988年には、有人ミッションの再開に貢献したとして、コリアー・トロフィーを受賞。1989年には、ロナルド・レーガン大統領から大統領市民勲章を授与されました。

2024年2月27日、86歳で逝去。彼の残した功績は、アメリカの宇宙開発史に深く刻まれています。

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