ペメックス

ペメックス（Pemex）とは

ペメックス（Petróleos Mexicanos, Pemex）は、メキシコを代表する国営石油企業です。本社をメキシコに置き、世界で10番目の売上高を誇る石油企業として知られています。メキシコのエネルギー産業において重要な役割を果たしており、ガソリンスタンドへの燃料供給から油田開発まで、幅広い事業を展開しています。

歴史

ペメックスの歴史は、メキシコの石油資源国有化の動きとともに始まりました。

前史

アステカ時代から、メキシコではアスファルトやピッチが利用されていました。1876年には、タンピコ近郊で初めてケロシンが発見され、石油資源開発の歴史が幕を開けました。1917年にメキシコ憲法が制定されると、メキシコ革命政府は国内の全ての鉱物資源の所有権を宣言しました。これにより、イギリスやアメリカの石油会社がメキシコに進出し、商業的な石油採掘が始まりました。

国有化とペメックスの設立

1938年、ラサロ・カルデナス大統領は、石油関係労働者の待遇改善を求め、外国資本の石油会社に給与と福利厚生の引き上げを要求しました。しかし、これが受け入れられなかったため、カルデナス大統領は憲法第27条を根拠に、アメリカとイギリス系の石油会社が所有する全ての資源と施設の国有化を宣言。これにより、ペメックスが設立されました。

国有化に対して、多くの外国政府はメキシコ産石油の市場からの締め出しという報復措置をとりました。しかし、ペメックスはラテンアメリカ最大の企業、世界有数の石油会社へと成長し、メキシコは世界で5番目の石油輸出地域となりました。

製品

ペメックスは、メキシコ国内のガソリンスタンドにガソリンを供給する唯一の企業です。ガソリンは「Magna」（レギュラーガソリン）と「Premium」（ハイオクガソリン）の2種類があります。以前は有鉛ガソリン「Nova」もありましたが、環境規制により廃止されました。

事故

ペメックスは、過去に数多くの事故を経験しています。

1979年：Ixtoc I 調査油井からの油漏れ事故（当時史上最悪の石油流出事故）
1984年：サン・フアン・イスアテペク爆発事故（500～600人が死亡）
1992年：グアダラハラ爆発事故（254人が死亡）
2007年：パイプライン爆破事件（反政府組織による犯行声明）
2007年：石油プラットフォーム衝突事故（22人が死亡）
2010年：パイプライン爆発事故（27人が死亡、52人が負傷）
2013年：メキシコシティ本社ビル爆発事故（少なくとも25人が死亡、101人が負傷）
2019年：ガソリン輸送パイプライン爆発事故（21人以上が死亡、71人が負傷）

これらの事故は、ペメックスの安全管理体制に対する懸念を高める要因となっています。

主な油田

ペメックスは、以下の主要な油田を保有しています。

チコンテペック堆積盆油田群
カンタレル油田
ク・マロブ・サップ油田

最近の状況

近年、ペメックスは様々な課題に直面しています。

ラテンアメリカ最大の企業ではなくなり、ペトロブラスに次ぐ2番目の規模となった
多額の負債を抱え、財政難に苦しんでいる
メキシコ政府に多額の税金を納めているが、その利益は設備投資などに十分回せていない
原油生産量が減少傾向にある
ガソリンの窃盗が横行し、供給不足や事故の原因となっている

メキシコ政府は、ペメックスの再建に向けて様々な取り組みを行っています。石油精製所の建設や老朽化施設の改修などの計画を進めていますが、その実現性には懸念の声も上がっています。

2018年政権交代を背景とする変化

2018年12月1日にアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドールが大統領に就任すると、ペメックスの規律強化、特にガソリンなどの石油製品の盗難防止に向けた取り組みが強化されました。石油製品の窃盗は、ペメックス職員と政治家、麻薬カルテルとの癒着によって生じていましたが、これらの関係は解消に向かっています。

しかし、2019年初頭には、窃盗品に依存した販売ルートが遮断されたことで深刻なガソリン供給不足が発生し、パイプラインへの襲撃や爆発事故も発生しました。メキシコ政府は原油生産の回復を目指して、石油精製所の建設などの計画を立てていますが、その実現には課題が残されています。

参考文献

チクシュルーブ・クレーター（ペメックスの油田調査により発見）

外部リンク

公式ウェブサイト（英語）（スペイン語）
Pemex - Facebook（スペイン語）
Petróleos Mexicanos (@pemex) - X（旧Twitter）（スペイン語）
Pemex (@pemex) - Instagram（スペイン語）
Security sheets for the use of substances (in PDF format) about the Pemex products: Magna, Diesel, Combustoleo（スペイン語）
Mexico's crude oil production chart (1980-2004)
Pemex: Challenges and Opportunities; Time for Reform? (Nov. 2006) p. 19 by Justin Dargin

ペメックスは、メキシコ経済において重要な役割を担う企業であり、その動向はメキシコのエネルギー政策に大きな影響を与えます。今後のペメックスの改革と成長に注目が集まります。

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