ホウケイ酸ガラス

ホウケイ酸ガラス：優れた耐熱性と耐久性を誇るガラス

ホウケイ酸ガラスは、その名の通りホウ酸を添加することで、一般的なガラスよりも優れた耐熱性と耐久性を備えた特殊なガラスです。5%以上のホウ酸を混ぜて製造されることで、軟化温度や硬度が向上し、熱による衝撃にも強い性質を持つため、耐熱ガラス、硬質ガラスとして広く知られています。理化学実験器具から、家庭で使用する調理器具まで、幅広い用途で使用されている、私たちの生活に欠かせない素材です。

ホウケイ酸ガラスの特性

ホウケイ酸ガラスの特筆すべき点は、その高い耐熱性と耐薬品性です。これは、ホウ酸の添加がガラス構造に影響を与えるためです。ホウ素の原子量が小さいことから、通常のガラスよりも密度が低く、熱膨張率も3×10⁻⁶/Kと、通常のガラスの約3分の1に抑えられています。この低い熱膨張率が、急激な温度変化による熱衝撃に対する高い耐性を生み出しています。そのため、急激な加熱や冷却によって割れることはありますが、粉々になることは少ないのが特徴です。

光学的な特性も優れており、色分散が小さく（アッベ数約65）、屈折率も低い（可視光領域で1.51～1.54）クラウンガラスとして分類されます。通常は無色透明ですが、ガラス工芸の用途では着色されたものも存在します。

製造方法

ホウケイ酸ガラスの製造には、通常のガラス原料である珪砂、ソーダ灰、石灰石に加え、ホウ砂が用いられます。実験器具などに用いられる低膨張率のホウケイ酸ガラスは、およそ80%の二酸化ケイ素、13%の酸化ホウ素、4%の酸化ナトリウム、2～3%の酸化アルミニウムで構成されています。高い融点を持つため、溶融にはガスバーナーなど高温を発生できる機器が必要です。

多様な用途

ホウケイ酸ガラスは、その優れた特性から、非常に幅広い用途に用いられています。現代では、ほとんど全ての実験用ガラス器具がホウケイ酸ガラスで作られています。より高い耐熱性や紫外線透過性が求められる場合には石英ガラスが用いられることもありますが、石英ガラスは加工が難しく高価であるため、ホウケイ酸ガラスが主流です。

ホウケイ酸ガラス製器具を使用する際には、微量ながらガラス中のホウ素が溶出する可能性があることに注意が必要です。ホウ素の分析を行う際には、ホウ素を含まない素材（軟質ガラス、石英ガラス、合成樹脂など）の器具を使用することが推奨されています。

耐熱性の高さから、台所用品としても広く利用されています。また、わずかな熱変動でも精度を維持する必要があるため、反射望遠鏡の鏡材としても使用されています。さらに、光学レンズの材料としても使用されますが、この用途では非常に高品質なものが求められます。

歴史

ホウケイ酸ガラスは、19世紀末にドイツの化学者フリードリッヒ・オットー・ショットによって開発されました。1893年には「デュラン」のブランド名で販売され、その後、1915年にコーニング社が「パイレックス」を発売したことで、特に英語圏ではパイレックスの名で広く知られるようになりました。ただし、家庭用品においては、パイレックスブランドであっても、欧州製品とアメリカ製品では、使用されるガラスの種類が異なる場合がある点に注意が必要です。欧州製品はホウケイ酸ガラスを使用している一方、アメリカ製品はソーダ石灰ガラスを使用しているケースが多いです。

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