ホスファチジルセリン

ホスファチジルセリンとは

ホスファチジルセリン（Phosphatidylserine、略称: PS）は、細胞膜を構成するリン[[脂質]]の一種です。この物質は、通常はフリッパーゼという酵素によって細胞膜の内側に位置しています。しかし、細胞がアポトーシス（自発的細胞死）に入ると、ホスファチジルセリンは細胞膜の内葉から移動し、表面に露出します。この現象は「イートミーシグナル」として知られ、免疫系の細胞に細胞の除去を促します。

代謝過程

ホスファチジルセリンは、細菌において、アミノ酸のセリンとCDP（シチジン二リン酸）の反応により合成されます。哺乳類では、ホスファチジルコリンやホスファチジルエタノールアミンといった他のリン[[脂質]]との塩基交換反応によって生成されます。また、ホスファチジルセリンはホスファチジルコリンやホスファチジルエタノールアミンに変わることもありますが、動物ではその反応が肝臓でのみ起こります。

応用分野

研究

アネキシン-A5という自然なタンパク質は、ホスファチジルセリンと強く結合します。この標識されたアネキシン-A5は、アポトーシスにある細胞をin vitroまたはin vivoで視覚化できるため、様々な研究に利用されています。他にもホスファチジルセリンに結合するタンパク質がいくつか発見されています。

腫瘍診断

悪性腫瘍と良性腫瘍を区別するためには、テクネチウムで標識されたアネキシン-A5を使うことができます。この方法は、細胞分裂とアポトーシスが頻繁に起こる病態を特定するのに役立ちます。

健康上の効能

認知機能

最近の研究によると、ホスファチジルセリンは高齢者の認知症リスクを低下させる可能性が示唆されています。特に、FDAはホスファチジルセリンに関する「限定的健康強調表示」の使用を許可し、高齢者による認知機能障害リスクの低減に関する情報を提供しています。

スポーツパフォーマンス

PSはサイクリングやウェイトトレーニング、ゴルフなどの運動を行う選手には、認知機能の向上やストレスへの内分泌反応の調整、さらには筋肉損傷の軽減を助けることが示されています。運動中に分泌されるコルチゾールの増加を抑える効果もあり、特に高用量の摂取が効果的とされています。

注意欠陥・多動性障害（ADHD）

最近の研究では、PSの補給がADHDのある子供に対しても有益であることが示唆されており、特に2ヶ月間の摂取が効果的だという結果が得られています。

安全性

従来、PSサプリメントはウシの脳から製造されていましたが、安全性に関する懸念があるため、現在はダイズ由来の製品が一般的です。このダイズ由来PSは「一般に安全と認められる」とされています。

食品中のホスファチジルセリン

ホスファチジルセリンは肉類に含まれていますが、特に脳や肝臓、腎臓に多く見られます。植物由来では、乳製品や野菜にはごく少量しか含有されていないため、西洋諸国における1日の平均摂取量は約130 mgと推計されています。

これらの情報から、ホスファチジルセリンは認知機能やスポーツパフォーマンスの向上、およびADHDの改善に寄与する可能性を秘めた重要な成分であることが理解されます。

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