リン脂質

リン脂質について

リン脂質（リンししつ、Phospholipid）は、リン酸エステル部分を持つ脂質群のことを指します。これらの分子は両親媒性の特性を持ち、細胞膜の重要な構成成分である脂質二重層を形成します。また、細胞内外でのシグナル伝達にも寄与しています。

1. 構造

一般的なリン脂質は、グリセリンやスフィンゴシンを基本骨格とし、そこに脂肪[[酸]]とリン酸が結合しています。この結合の過程で、リン酸はアルコールとエステル化されます。アルコール部分には、通常、窒素を含む物質が結合します。リン脂質の種類は、脂肪[[酸]]やアルコールの組み合わせによって非常に多様化します。

リン酸は3価の酸で、3つのヒドロキシル基のうち2つがエステル結合、残りの1つがアニオンとして存在します。このなかで、疎水性の脂肪[[酸]]部位と親水性のリン酸部位が共存することで、リン脂質は界面活性剤のように振る舞います。水中では親水性部位が外側を向き、疎水性部位が集まることで安定した脂質二重層が形成されます。

2. 分類

リン脂質は大きく2つに分類されます。1つは、グリセリンを骨格とするグリセロリン脂質、もう1つはスフィンゴシンを骨格とするスフィンゴリン脂質です。グリセロリン脂質には、C1とC2に脂肪[[酸]]が結合し、C3にリン酸が結合したホスファチジン酸があります。C2から脂肪[[酸]]が外れたものはリゾホスファチジン酸です。古細菌の細胞膜には、脂肪[[酸]]がエステル結合の代わりにエーテル結合されているエーテル型脂質が存在します。

スフィンゴシンは、パルミチン酸とセリンから構成され、C1には長鎖アルキル基、C2には脂肪[[酸]]がアミド結合します。このようなスフィンゴリン脂質の例としては、スフィンゴミエリンがあります。

3. 生合成経路

グリセロリン脂質の合成過程では、アルコールがキナーゼによってリン酸エステル化されます。次に、シチジン二リン酸（CTP）と反応し、活性化された状態になると、1,2-ジグリセリドと反応してリン脂質が生成されます。ホスファチジルセリンは、この過程でホスファチジルエタノールアミンのメチル化によって合成されます。スフィンゴシンを用いるスフィンゴリン脂質の経路も考察されていますが、従来の方法とは異なる新たな合成経路も提案されています。

4. 役割

リン脂質は自己組織化により脂質二重層を形成し、細胞膜の主要な成分となります。この膜は浸透性があり、柔軟で流動的な特性を持つため、内部のリン脂質やタンパク質は自由に移動できます。また、リン脂質が特定の酵素によって分解されることで生成される脂肪[[酸]]は、細胞内のシグナル伝達において重要な役割を果たしていることが明らかになりつつあります。

5. 主なリン脂質

• - ホスファチジルコリン: レシチンとして知られ、コリン神経系でアセチルコリンの生成に寄与します。
• - ホスファチジルエタノールアミン: 別名セファリンと呼ばれます。
• - ホスファチジルイノシトール: シグナル伝達に関与しており、選択的にリン酸化される数種類があります。
• - ホスファチジルセリン: ホスファチジルエタノールアミンから派生した構造です。
• - ホスファチジルグリセロール: 植物の葉に多く含まれます。
• - ジホスファチジルグリセロール: カルジオリピンとしても知られ、ミトコンドリア内膜に含まれます。
• - スフィンゴミエリン: 髄鞘に豊富に含まれています。

リン脂質はその多様な構造と機能により、生物の細胞において欠かせない役割を果たしています。

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