ホトトギスガイ

ホトトギスガイ（Musculista senhousia）

イガイ目イガイ科に分類される、比較的小型の二枚貝です。主に内湾の砂泥底や砂礫底に生息し、潮間帯から水深10メートル程度の浅い海で見られます。アマモやコアマモといった海草が生える藻場の周辺に多く見られますが、干潟の潮間帯下部にある水たまりの縁など、常に水が残る場所にも生息しています。乾燥には弱いため、干潮時に完全に干上がる場所には見られません。

特徴

貝殻は成貝で殻長3センチメートルほどになりますが、2センチメートル程度の個体が一般的です。殻は卵形で薄く、殻のてっぺん（殻頂）は膨らみがありますが、後ろ側はやや平たい形をしています。貝殻の外側は光沢のある緑褐色を帯び、その上に赤褐色のジグザグとした縞模様が多数走っています。この縞模様が、鳥のホトトギスの胸にある縦縞に似ていることから、「ホトトギスガイ」と名付けられました。単に「ホトトギス」と呼ばれることもあります。殻の内側は青白色をしており、わずかに真珠のような光沢があり、外側の縞模様も透けて見えます。

生態

ホトトギスガイは足糸と呼ばれる繊維をたくさん出して、周囲の砂や小石を絡め取り、自分の体より少し大きめの塊を作ってその中に潜り込んでいます。潮干狩りなどで砂の中から糸でつながった砂の塊が出てきたら、中にこの貝が入っている可能性があります。時に大発生することがあり、多数の個体が密集すると、足糸と砂粒が絡み合って海底をカーペットのように覆ってしまうことがあります。また、若い個体は足糸を使って水面を浮いて移動する能力も持っています。

他の多くの二枚貝と同様に、海水中のデトリタス（有機物の分解物）やプランクトンを吸い込んで食べる濾過摂食者です。天敵としては、沿岸に生息する魚類や大型の甲殻類、そしてツメタガイやヒメヨウラクなどの肉食性の巻貝などが知られています。

分布と外来種問題

本来の分布域は、日本の北海道から九州にかけてと、朝鮮半島、中国といった東アジアの温帯域です。しかし現在では、北米、ヨーロッパ、オーストラリアなど、世界の温帯域各地に外来種として定着し、分布を広げています。これは、養殖用のカキなどに付着して運ばれたり、船のバラスト水に幼生が混入したりして、新たな場所に移り住み、繁殖したと考えられています。

人間との関わり

日本の内湾ではよく見られる貝ですが、小型であるため食用としてはあまり利用されていません。一方、中国の潮汕地方など一部の地域では、タイバジルなどと一緒に炒めて食べる習慣があります。

しかし、大発生して海底をカーペット状に覆う状況になると、同じ砂地に生息するアサリなどの他の二枚貝を窒息死させてしまうなど、漁業に大きな被害を与えることがあります。また、足糸で固められた砂地には、糸状の藻類などが繁殖しやすくなることも知られています。

近縁種

同じホトトギスガイ属（Musculista）には、ホトトギスガイによく似た種類がいくつかいます。

ヤマホトトギス（Musculista japonica）：ホトトギスガイよりも前後に細長い貝殻を持ちます。本州中部以南から東南アジアにかけて分布し、水深50メートルまでの泥底に生息しています。ホトトギスガイほど密集して固着することは少ないです。
ノジホトトギス（Musculista perfragilis）：ホトトギスガイよりも小型で、貝殻の斑紋があまりはっきりしません。本州中部以南に分布し、水深20メートルから100メートルにかけての泥底に生息しています。

これらの近縁種も、ホトトギスガイと同様に小さなイガイの仲間です。

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