ホトトギス

ホトトギス：日本の夏を彩る鳥

はじめに

ホトトギス（学名: Cuculus poliocephalus）は、カッコウ目カッコウ科に属する鳥類です。特徴的な鳴き声と、ウグイスなどの他の鳥に托卵する習性で広く知られています。日本では古来より親しまれ、『万葉集』をはじめとする多くの古典文学作品に登場するなど、日本文化と深く関わりのある鳥です。本稿では、ホトトギスの形態、分布、生態、鳴き声、そして文学や芸術におけるホトトギスのイメージについて解説します。

形態

ホトトギスは全長約28cmで、ヒヨドリよりもやや大きく、ハトよりは小さい体格です。頭部と背中は灰色、翼と尾羽は黒褐色をしています。胸と腹は白い羽毛で覆われ、黒い横縞が入っていますが、これはカッコウやツツドリのものよりも細く、目立ちません。目の周りには黄色のアイリングがあります。

分布

ホトトギスは、アフリカ東部、マダガスカル、インドから中国南部にかけて広く分布しています。インドから中国南部で越冬した個体群は、5月頃になると中国北部、朝鮮半島、そして日本へと渡ってきます。日本では5月中旬頃に渡来し、夏鳥として九州以北で繁殖します。他の渡り鳥よりも渡来が遅いのは、托卵する宿主となる鳥の繁殖時期に合わせ、また、ホトトギスの主食である毛虫類が十分に発生するのを待つためだと考えられています。

生態

日本では九州以北に夏鳥として渡来しますが、九州と北海道では個体数は少ないです。カッコウと同様に肉食性で、特にケムシを好んで食べます。そして、自身では子育てを行わず、主にウグイスに托卵するという独特の繁殖戦略を持っています。

鳴き声

オスの鳴き声は「キョッキョッ キョッキョキョキョ！」と聞こえ、「ホ・ト・ト・ギ・ス」とも聞こえる、けたたましい鳴き声です。早朝からよく鳴き、夜に鳴くこともあります。この鳴き声から、「本尊掛けたか」「特許許可局」「テッペンカケタカ」といった聞きなしが生まれ、人々の耳に親しまれてきました。

文学・芸術におけるホトトギス

中国の故事

「杜宇」「蜀魂」「不如帰」といったホトトギスの異名は、中国の伝説に由来します。古蜀国の王であった杜宇が死後、ホトトギスに生まれ変わり、農耕の時期を知らせるように鳴くようになったという故事です。「不如帰」は、蜀が滅ぼされたことを悲しみ、血を吐いて鳴くホトトギスを指す言葉です。

日本の芸術

日本では、ホトトギスの鳴き声は古来より和歌や俳句、絵画など様々な芸術作品に詠まれ、表現されてきました。『万葉集』『古今[[和歌集]]』『新古今[[和歌集]]』など、多くの歌集にホトトギスの歌が収録されています。また、正岡子規は、自身の俳号を「子規」とし、ホトトギスを自身の境遇と重ね合わせて数多くの作品を残しました。ホトトギスを題材とした音楽作品も多く存在します。

ホトトギスと天下人

鳴かないホトトギスをどうするか、というたとえ話で、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康といった天下人の性格が表現されることがあります。これは、それぞれの人物の性格を巧みに表現した、興味深い逸話です。

その他

ホトトギスは、香川県と岡山県の県鳥に指定されていました。しかし、岡山県では托卵習性のイメージの悪さから、後にキジに変更されました。また、ホトトギスは様々な異名を持っており、地域によって呼び方が異なることも興味深い点です。

結論

ホトトギスは、その独特の鳴き声と生態、そして文学や芸術作品への数々の登場を通して、私たち日本人の文化や生活に深く根付いた鳥と言えるでしょう。これからも、日本の夏を代表する鳥として、人々に愛され続けることでしょう。

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