ホネクイハナムシ

ホネクイハナムシ（Osedax japonicus）の概要

ホネクイハナムシ（Osedax japonicus）は、特異な生態を持つ多毛類の一種で、主に海底に沈んだクジラの死骸に生息しています。この種は2006年に日本の鹿児島県、野間岬沖に人為的に沈められたマッコウクジラの死骸から発見されました。ホネクイハナムシは「鯨骨生物群集」として位置づけられ、深海生物研究の中でも注目されています。

特徴と生態

ホネクイハナムシの雌は、体が 3 つの主要部分に分かれています。具体的には、鰓冠、中体部、樹根状栄養体部です。一方で、雄は非常に小さく、トロコフォア幼生に似た姿をしており、雌の棲管やその周囲の粘液中に生息しています。

雌は樹根状栄養体部を用いてクジラの骨や死骸の肉に付着します。この部分には従属栄養細菌が共生しており、クジラの死骸から脂質を取り込んで栄養を得ます。この栄養源に強く依存するため、ホネクイハナムシは消化管を有していません。また、雌の生殖巣も樹根状栄養体部に位置しています。

ホネクイハナムシの中体部は、薄い膜状の棲管によって保護されており、先端の鰓冠が外に出ています。鰓冠は4本の鰓から成り、赤い血液を含むため、鮮やかな赤色に見えます。鰓の長さは1から7ミリメートルであり、中体部の長さはおよそ9ミリメートルです。

この種の特徴的な点は、卵を水中に放出せず、棲管を覆う粘液中でトロコフォア幼生まで成長させることです。また、輸卵管の開口部が短いことも、この種ならではの特性です。ホネクイハナムシは、比較的浅い水深（200メートルから250メートル）に生息し、特に高い水温に適応しています。

系統と分類

系統学的には、ホネクイハナムシ属は熱水噴出孔に生息するハオリムシ類と近縁であり、以前は有鬚動物門として分類されたヒゲムシ類とともに、環形動物門シボグリヌム科に属します。ホネクイハナムシ属には、ホネクイハナムシの他にもアカホネクイハナムシ（O. rubiplumus）やタテジマホネクイハナムシ（O. frankpressi）などが含まれ、2009年までに11種が確認されています。また、未記載種も存在することが知られています。

このように、ホネクイハナムシは非常に特異な生態を持つ生物であり、深海の生態系において重要な役割を果たしています。クジラの死骸を支えに生きるこの生物の研究は、深海の生物一つ一つがどのように相互に関係し、環境に適応しているのかを理解する手助けとなります。

参考文献

• - 藤倉克則、奥谷喬司・丸山正『潜水調査船が観た深海生物 深海生物研究の現在』東海大学出版会、2008年。ISBN 9784486017875。
• - 北村雄一『深海生物の謎 彼らはいかにして闇の世界で生きることを決めたのか』ソフトバンク・クリエイティブ〈サイエンス・アイ新書〉、2007年。ISBN 9784797339239。

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