ホレス・パーラン

ホレス・パーラン（1931年 - 2017年）は、20世紀後半のアメリカを代表するジャズ・ピアニストの一人として、ハードバップからポスト・バップにかけての時代に重要な足跡を残しました。彼のキャリアは、その個性的な演奏スタイルと、数多くの著名なミュージシャンとの協力を通じて広く認知されています。

パーランの音楽人生を語る上で欠かせないのが、少年時代に罹患したポリオによる右手の部分的な変形です。しかし、彼はこの困難を乗り越え、これを逆手に取るかのように、極めて独創的なピアノ演奏の技巧を発展させました。彼のスタイルは、特に左手で奏でられる、感情豊かで刺激的なコードワークと、右手の著しくリズミカルで特徴的なフレーズとのコントラストに特徴があります。こうした演奏法は、アーマッド・ジャマルやバド・パウエルといったピアニストからの影響を受けつつも、ブルースやリズム・アンド・ブルースといったアフリカ系アメリカ音楽の深いルーツに根ざしており、洗練されたビバップのハーモニーと力強いグルーヴ感を見事に融合させたものでした。

彼のプロとしての活動は、リズム・アンド・ブルースのバンドとの共演から始まりました。1952年から1957年にかけては、ワシントンD.C.を拠点にサックス奏者のソニー・スティットと活動し、ニューヨークに進出する足がかりを築きました。1957年にニューヨークへ移ると、彼はベーシストのチャールズ・ミンガスが主宰するワークショップに参加し、約2年間にわたるこの協力関係が、彼のその後のキャリアにおいて強固な基盤となりました。この時期にパーランがピアニストとして参加したミンガスのアルバム、特にジャズ史における古典とされる『ミンガス・アー・ウム』や『ブルース・アンド・ルーツ』は、彼の名をより幅広い聴衆に知らしめることとなりました。

ミンガスとの活動後も、パーランは精力的に様々なミュージシャンと共演を重ねました。1960年から1961年にはテナー・サックス奏者のブッカー・アーヴィンと頻繁に共演し、1962年にはエディ・ロックジョウ・デイヴィスとジョニー・グリフィンのクインテットに参加しています。また、1963年から1966年にかけては、革新的な演奏で知られるマルチリード奏者、ローランド・カークとの共演も行いました。この1960年代は、名門ブルーノート・レコードからのリーダー作も多数発表した時期であり、『ムーヴィン・アンド・グルーヴィン』、『アス・スリー』、『スピーキン・マイ・ピース』、『オン・ザ・スパー・オブ・ザ・モーメント』、『アップ・アンド・ダウン』といった作品群を生み出しました。これらの録音には、スタンリー・タレンタイン、ジョージ・タッカー、アル・ヘアウッドといった当時の著名なミュージシャンが参加しています。

1973年、パーランはアメリカ合衆国を離れてデンマークに移住し、コペンハーゲンに定住しました。このヨーロッパへの移住は、彼のキャリアにおける新たな展開をもたらしました。スティープルチェイス・レーベルからの数多くの録音を通じて、彼の名声はさらに国際的に高まりました。中でも、テナー・サックス奏者のアーチー・シェップとの共演シリーズは特に有名で、彼の新たなファン層を獲得するきっかけとなりました。

デンマークでの活動を通じて、パーランはデクスター・ゴードンやレッド・ミッチェル、フランク・フォスター、マイケル・ウルバニアクなど、多岐にわたるミュージシャンとの録音を行いました。彼の後期の作品には、アルバム『ゴーイン・ホーム』などに顕著に見られるように、ゴスペル音楽から影響を受けた、堅固で精神性の高い楽曲が多く含まれています。ホレス・パーランは2017年2月23日にその生涯を終えましたが、ポリオを乗り越えて築き上げたその個性的な音楽スタイルと、ジャズ界に残した豊かな遺産は、今も多くの音楽ファンに愛され、聴き継がれています。

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