ホロフェルネスの首を斬るユディト (ジェンティレスキ)

『ホロフェルネスの首を斬るユディト』は、イタリアの画家アルテミジア・ジェンティレスキが1620年頃に制作した油彩作品で、フィレンツェのウフィツィ美術館に所蔵されています。この絵画は、旧約聖書の『ユディト記』に登場する、勇ましい女性ユディトが敵将ホロフェルネスを討つ場面を描いたものです。

本作は、カラヴァッジオが1598年頃に描いた同名の作品に触発されたとされていますが、ジェンティレスキは独自の視点と力強い筆致で、この古典的な物語に新たな命を吹き込みました。

絵の中央には、ベッドに横たわるホロフェルネスの姿があります。彼は酔いつぶれた状態で、2人の女性によって押さえつけられています。画面手前で剣を握り、首を斬りつけるのはユディトです。彼女は眉間に皺を寄せ、強い意志を宿した眼差しで、敵を見据えています。ユディトの衣服はたくし上げられ、肩や胸元が露わになっていますが、その肌には飛び散った血しぶきが付着しています。彼女の左手は、ホロフェルネスの頭髪をしっかりと掴んでいます。剣の柄は十字架の形をしており、この行為が神聖な目的のためであることを示唆しています。

画面奥には、ユディトの侍女が描かれています。彼女もまた、袖をまくり上げ、全身を使ってホロフェルネスを押さえつけています。侍女はユディトの行動を支える重要な役割を担っており、物語の緊迫感を高めています。ホロフェルネスは髭を生やし、がっしりとした体格ですが、目は虚ろで口を開けており、生命力を失った様子が強調されています。シーツには血が滴り落ち、動脈からは勢いよく血が噴き出しており、場面の悲惨さを際立たせています。

ユディトの左腕には、ブレスレットが付けられています。このブレスレットには、月や狩猟を司る女神ディアーナが描かれています。ディアーナはギリシア神話ではアルテミスと呼ばれており、これは本作の作者がアルテミジアであることを暗示しています。これは、絵画の中に作者自身の痕跡を潜ませる、興味深い手法です。

ジェンティレスキの『ホロフェルネスの首を斬るユディト』は、単なる歴史画としてだけでなく、女性の力強さや復讐心を表現した作品としても評価されています。バロック美術特有の劇的な表現と、アルテミジア・ジェンティレスキの独特な視点が組み合わさった、非常に印象的な作品です。

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