ユディト

ユディトの物語

ユディトは、『ユディト記』に登場するユダヤ人女性で、その物語は、信仰、勇気、そして知恵を象徴する物語として知られています。彼女はメラリの娘として生まれ、マナセと結婚しましたが、夫を日射病で亡くし寡婦となりました。美しい容姿と財産を持ち合わせていましたが、それ以上に唯一神への揺るぎない信仰心を持ち、人々から尊敬を集めていました。

アッシリアの侵攻とユディトの決意

アッシリアの王ネブカドネツァルは、自らに協力しなかった諸民族を攻撃するため、司令官ホロフェルネスを派遣します。ホロフェルネスは軍勢を率いてユダヤに侵攻し、ベトリアという町を包囲しました。水源を絶たれたベトリアの人々は降伏を決意しますが、ユディトは人々に神への信頼を訴え、降伏を思いとどまらせます。そして、自らホロフェルネスを討つという大胆な作戦を実行に移すことを決意します。

敵陣への潜入と暗殺

ユディトは美しく着飾り、ホロフェルネスのもとへ赴きます。エルサレム進軍の道案内を申し出たユディトを、ホロフェルネスは喜んで迎え入れます。彼女は敵陣において、異邦人の食べ物を口にせず、4日間を待ちました。4日目、ホロフェルネスはユディトを酒宴に招き入れ、泥酔します。そして、天幕にはユディトと眠るホロフェルネスの二人だけが残されました。ユディトはそこで、ホロフェルネスの短剣を手に取り、彼の首を切り落としたのです。

勝利とその後

ユディトは、ホロフェルネスの首を携えて侍女と共にベトリアへ帰還し、事の顛末を報告しました。司令官を失ったアッシリア軍は動揺し、ユダヤ人はこの機に乗じて出撃し、敵軍を打ち破りました。その後、ユディトは105歳で亡くなるまで、静かにベトリアで暮らしました。この物語は、勇気と信仰によって逆境を乗り越えるユディトの姿を描き出し、多くの人々に感動を与えています。

歴史的背景と考察

『ユディト記』には歴史的に正確でないとされる箇所が存在します。例えば、ネブカドネツァルは新バビロニア王国の王であり、アッシリア王ではありません。また、物語に登場するベトリアという町も、その場所は特定されていません。ユディトという名前のヘブライ語の読みは「イェフディト」で、これは「ユダの女」という意味になります。ただし、旧約聖書には同名の人物も存在するため、七十人訳聖書では区別するために別の表記が用いられています。

関連芸術作品

ユディトの物語は、そのドラマチックな展開から、数多くの芸術作品の題材となってきました。

絵画

ボッティチェッリ：『ホロフェルネスの首を持つユーディット』
ルーカス・クラナッハ：『ホロフェルネスの首を持つユディト』
ジョルジョーネ：『ユディト』
カラヴァッジオ：『ホロフォルネスの首を斬るユーディット』
クリストファーノ・アローリ：『ホロフェルネスの首を持つユーディット』
アルテミジア・ジェンティレスキ：『ホロフェルネスの首を斬るユディト』（カポディモンテ美術館所蔵）
アルテミジア・ジェンティレスキ：『ホロフェルネスの首を斬るユディト』（ウフィツィ美術館所蔵）
アルテミジア・ジェンティレスキ：『ユディトとその侍女』
フランシスコ・デ・ゴヤ：『ユーディットとホロフェルネス』
クリムト：『ユディトI』『ユディトII』

音楽

ヴィヴァルディ：オラトリオ『勝利のユディータ』R.644
モーツァルト：オラトリオ『解放されたベトゥーリア』K.74c
オネゲル：オラトリオ『ユーディット』H.57A
レズニチェク：歌劇『ホロフェルネス』（1922年）

文学

ヘッベル：戯曲『ユーディット』
ジロドゥ：戯曲『ユディット』

映像作品

映画『ベッスリアの女王』（1914年）

脚注

関連項目

ユディト (小惑星)

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