ホンダ・145

ホンダ・145の詳細

ホンダ・145（ほんだ・いちよんご）は、本田技研工業が1972年から1974年まで生産した小型乗用車で、4ドアセダンと2ドアクーペの2つのボディスタイルを持っています。このモデルは、名称が変更されたものの、1300のマイナーチェンジモデルであり、そのデザインやメカニズムに多くの工夫が施されています。

外観とデザイン

145の外観は、前モデルである1300の後期型を踏襲しており、特に4ドアセダンはオーソドックスな丸型二灯式ヘッドライトを持つ平凡なスタイルです。このデザインは、当時のホンダ車としては珍しく地味な印象を与えています。一方、2ドアクーペは、旧1300の「ダイナミックシリーズ」のデザインを継承しており、ややアグレッシブな印象を与える角型ヘッドライトが特徴です。

外装の変更点は少ないものの、メカニズムには多くの改善が行われました。これには、水冷化に伴うエンジンルーム内のパネル形状の変更、振動低減のためのフレーム追加、ホイールのオフセット変更、リアサスペンションのジオメトリ変更、フロントスタビライザーの装備などが含まれます。

エンジンとパフォーマンス

145に搭載されたのは、1972年7月に登場したシビック用エンジンを基にしたEB5型水冷直列4気筒SOHC 1,433ccエンジンです。このエンジンはシングルキャブレター仕様で、最高出力は80PS（5,500rpm）を発揮しました。さらに、2ドアクーペに設定された「FI」グレードは機械式燃料噴射装置を搭載し、最高出力は90PS（6,000rpm）を達成しました。この新型エンジンは無鉛ガソリンに対応しており、公害対策にも配慮されています。

前モデル1300では、複雑な構造の空冷エンジンによる前輪荷重が大きな問題でしたが、145の新エンジンによりその負担が軽減され、操縦性が向上しました。また、前輪にディスクブレーキを採用した点は、当時のトレンドに先駆けたその時代の特徴です。ホイールハブボルトのP.C.D.は1300と同じく4穴・120mmの特殊な規格で、初代シビックや初代アコードなどにも継承されました。

バリエーションと販売状況

145のモデルには、セダンは「スタンダード」、「デラックス」、「カスタム」の3タイプ、クーペには「SL」、「GT」、「GL」、「FI」の4タイプが用意されました。当初の設定では、フロアシフトの4速MTのみが搭載されていました。このモデルの月間販売目標は1,000台と控えめに設定されていました。

高い完成度を誇る145ですが、エクステリアは1300に類似しているため、人気は今一つであり、販売は低調でした。特にクーペの「GT」や「GL」が一定の売れ行きを示しましたが、高価な「FI」は希少な存在でした。

生産終了

1974年には生産が終了し、その年の12月には販売も終了しました。総生産台数は9736台であり、145の登場によりホンダ車のラインナップからノッチバックセダンとノッチバッククーペが一時姿を消すことになりました。前身モデルの1300の欠点を克服した145は、成功には至らなかったものの、ホンダにとって重要なモデルでした。

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