ホンダ・RA260E

ホンダ・RA260E: フォーミュラ2用エンジン

ホンダ・RA260Eは、1980年に本田技研工業により制作されたフォーミュラ2（F2）向けのエンジンです。このエンジンは、名高い設計者川本信彦のもと、同時代のBMWの直列4気筒エンジン「M12/7」を越える性能を目指して開発されました。RA260Eの名は、フォーミュラ2の“2”に、80年代の一桁数値から取られています。

1. 概要と設計

1980年、フォーミュラ2選手権に参戦するために設計されたRA260Eは、鋳鉄製の直列6気筒エンジンで、バンク角は80度に設定されています。シリンダーブロックは水冷V6型で、総排気量は1,996.3cc。最大出力は310PS以上に達し、エンジンの重量は125kgとなっています。

このエンジンは従来の高回転型ではなく、中低回転域でのトルク重視の設計に転換され、回転数は最高で12000rpmに抑えられています。これにより、メンテナンスが容易で、各チームにとって扱いやすい特性を持たせることが意図されました。

2. 開発経緯

川本は1977年からF2用エンジンの設計を行い、ホンダのエンジン技術を活かしながら新たな挑戦を開始しました。当初、BMWの強力な直列4気筒エンジンの存在があり、これを上回る性能を確保するためにV6エンジンが選ばれました。これは、エンジン全長の短縮や軽量化にも寄与しました。

3. 燃焼室とバルブの設計

RA260Eはペントルーフ型燃焼室を採用しており、これはホンダが以前から使用していた技術をベースにしています。バルブ駆動システムはロッカーアームを使用し、効率的なリフトを確保しています。この工夫は、回転数制限を考慮しつつ出力を確保するために重要です。

4. F2選手権への適応

1980年、RA260Eはラルト・RH6に搭載され、ヨーロッパF2選手権に参戦し始めました。この年からは、ジェフ・リースとナイジェル・マンセルがホンダエンジンを駆るドライバーとして参戦しました。ホンダはF2エンジンの供給を少数のチームに制限し、改良を施しながら競技に臨みました。

5. エンジンの進化

RA260Eは、シーズンごとに改良され、1981年のRA261Eではヘッドカバーや燃料システムの改良が行われ、より高性能になりました。その後もRA262EからRA266Eまでのモデルが登場し、毎年進化を続けました。

特にRA264Eでは、ヨーロッパF2選手権の最終年として、サックウェルがシリーズチャンピオンを勝ち取る結果を残しました。このように、ホンダのエンジンは当時の技術の粋を集めて設計されており、F2の舞台で数々の成功を収めました。

6. 終焉と影響

最終的なモデルであるRA266Eを持ってホンダのF2エンジン開発は終了し、以降は全日本F3000選手権へと移行することとなります。しかし、RA260Eとその派生モデルたちがもたらしたレーシングエンジンの進化は、ホンダの名声をさらに高める結果に繋がりました。

このように、ホンダ・RA260Eは単なるエンジン以上のものであり、当時の技術の進化を象徴する重要な存在だったのです。

もう一度検索