ホンダ・RA301

ホンダ・RA301の概要

ホンダ・RA301（ホンダ・アールエーさんびゃくいち）は、1968年のF1世界選手権に参戦するために開発されたフォーミュラ1カーです。この車両は、前年のRA300を改良したモデルであり、大きな特徴はそのエンジン性能と設計の工夫にあります。ホンダはこのモデルを運用する際、エンジンにRA301Eを搭載しました。RA301は日本のホンダとイギリスのローラ・カーズとの共同開発によって生まれたため、ローラ側では「ローラ・T180」とも呼ばれています。

主な技術的変更点

RA301は、前年型RA300の基になる部分を大幅に改良しています。特に注目すべきはエンジン周りの変更です。エキゾーストパイプの取り回しが見直され、従来のようにエンジンの上部からではなく、一般的なフォーミュラカーと同じく下部から出るように変更されました。これにより、エンジンの排熱管理が改善され、性能に寄与しています。また、バルブスプリングにはトーションバーを採用し、これもRA301の走行性能向上に貢献しました。

レース成績と課題

RA301は1968年シーズン中、何度かのレースに出場しましたが、信頼性に課題がありました。特に完走率が低く、サーティースがドライブしたレースの中で、ポールポジションを獲得したのはイタリアGPのみであり、フランスGPでは最高位の2位を記録しています。しかし、全体的にはほとんどのレースでリタイアを余儀なくされたため、サーティースの完走はわずか3回にとどまりました。加えて、シーズン途中のイギリスGPでは、ハイマウント式のリアウィングが装備され、空気力学的なパフォーマンス向上が図られました。

安全性の問題とRA302

ホンダはRA301の開発と並行して、RA302という空冷エンジンを搭載したモデルの開発にも取り組んでいました。しかし、RA302の試運転において安全性が問題視され、シーズン中にその投入が懸念されました。特に、RA302の運転中に事故が発生し、ドライバーのジョー・シュレッサーが命を落とす悲劇がありました。この影響もあり、RA301はこのシーズンの終了まで使用され続けることになりました。

最後のF1マシンとしての役割

ホンダは1968年シーズンが終了する際にF1からの撤退を決定し、RA301はその後、しばらくの間、最後の実戦を走行したフォーミュラ1カーとなりました。2006年に登場するまで実戦を走ったF1カーとしては最後だったのです。シーズン終了後、RA301はメキシコGPの後、アメリカのインディアナポリス・モーター・スピードウェイに運ばれ、ロニー・バックナムの運転によりテスト走行が行われました。

現在、RA301はツインリンクもてぎにあるホンダコレクションホールに保存されており、5号車とTカーが展示されています。このうち5号車は、特別なイベントなどでの走行も行われており、多くのファンに親しまれています。

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