ボズヴァル・ビャルキ

ボズヴァル・ビャルキ：伝説の英雄

ボズヴァル・ビャルキ（古ノルド語: Bǫðvarr Bjarki、「好戦的な子グマ」の意）は、フロールヴ・クラキ王の物語に登場する伝説的な英雄です。彼は「フロールヴ・クラキのサガ」や『デンマーク人の事績』などの文献に登場し、その勇敢な活躍が語り継がれています。

生い立ちと力

ビャルキの父ビョルン（「クマ」の意）は、ノルウェーの王フリングの息子でした。ビョルンは、フリングの再婚相手であるフヴィートの策略により、昼はクマ、夜は人間という姿に変えられてしまいます。その後、ビョルンはベラという女性との間に三つ子をもうけます。その三男こそがボズヴァル・ビャルキでした。

ビャルキは幼い頃から並外れた力を持っており、兄たちと共に成長しました。ある時、彼は兄フロージの血を飲むことで、さらに力を増幅させました。その後、ガウトランドのソーリル王の元を経て、フロールヴ・クラキ王の宮廷へとたどり着きます。

フロールヴ王への忠誠

フロールヴ王の宮廷では、ビャルキは数々の功績を上げました。彼は、いじめられていた奴隷のホットを救い、怪物の血を飲ませることで勇敢な戦士ヒャルティへと変えました。また、ベルセルクとの戦いに勝利し、デンマークの偉大な勇者として名を馳せました。

ビャルキは王の信頼厚い助言者となり、戦いのリーダーとして活躍しました。彼はフロールヴ王に、父の財宝を取り戻すためにウプサラのアジルス王の元へ行くように助言し、有名なエピソードを生み出しました。しかし、帰路でオーディン神の怒りを買い、勝利の神の好意を失ってしまいます。

最後の戦いと死

フロールヴ王の異母妹夫婦が反乱を起こし、ライアを攻撃した際、ビャルキは広間で催眠状態に陥っていました。その間、巨大なクマが反乱軍を圧倒しましたが、ヒャルティに起こされたことでクマは消滅してしまいます。クマはビャルキの霊魂（フグ）だったのです。

ビャルキは戦いに参加しますが、クマほどの力は発揮できませんでした。反乱軍は防衛側を圧倒し、フロールヴ王、ビャルキ、そして他の戦士たちは皆殺しにされてしまいました。ビャルキは最後まで王に忠誠を誓い、壮絶な最期を遂げたのです。

ビャルキの古詩

「ビャルキの古詩」は、ボズヴァル・ビャルキとヒャルティの対話を描いた古ノルド語の詩です。この詩では、ヒャルティが何度もビャルキを起こし、王のために戦うよう促す様子が描かれています。ビャルキが目覚めたことで、彼の生霊であるクマは消滅してしまいます。

ベーオウルフとの類似性

ボズヴァル・ビャルキは、古英語の詩「ベーオウルフ」に登場する英雄ベーオウルフと同一人物、あるいは何らかの近縁関係にあったと考える研究者もいます。両者には、怪物を退治する、熊の要素を持つなどの共通点が見られます。

トム・シッピーは、J・R・R・トールキンの『ホビットの冒険』に登場するビヨルンは、ビャルキと類似した人物造形であると指摘しています。

ボズヴァル・ビャルキは、その勇気と忠誠心で、多くの人々に語り継がれる英雄なのです。

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