ボリス・ティシチェンコ

ボリス・イヴァノヴィチ・ティシチェンコ（1939年3月23日 - 2010年12月9日）は、ロシアの作曲家です。彼は、ドミートリイ・ショスタコーヴィチやガリーナ・ウストヴォーリスカヤといった著名な作曲家に師事し、レニングラード音楽院で教鞭を執りました。彼の弟子には、入野賞を受賞したボリス・フィラノフスキーがいます。

ティシチェンコは、「ショスタコーヴィチの証言」で知られるソロモン・ヴォルコフをショスタコーヴィチに紹介した人物でもあります。彼の音楽は、師であるショスタコーヴィチと同様に、思想的、哲学的な内容を感じさせる傾向があります。

作風の特徴

ティシチェンコの作風は、幅広いジャンルに及び、その中でも特に管弦楽作品とピアノ作品が知られています。彼の作品は、時に独特な編成や、実験的な試みがみられます。

初期の作品である「チェロ協奏曲第1番」は、当初、独奏チェロの他に17の管楽器と打楽器、ハーモニウムという特殊な編成でした。この作品は、ショスタコーヴィチによって通常の管弦楽版が作成され、より演奏される機会が増えました。また、この作品はショスタコーヴィチの「チェロ協奏曲第1番」に影響を与えたとも言われています。また、「チェロ協奏曲第2番」も、48のチェロ、12のコントラバス、打楽器という非常に特殊な編成ですが、作曲者自身による通常の管弦楽版も存在します。

「チューブラー・ベルとグロッケンを伴うピアノソナタ第7番」は、彼の音楽の特徴がよく表れている作品の一つです。この作品では、チューブラー・ベルが徐々に音数を増やしながらクレッシェンドし、最高潮に達したところで、ピアノのクラスターと和音が弔鐘のようにゆっくりと連打されます。この部分では宗教的な雰囲気が醸し出されますが、ピアノソロになると、突然ドミソの三和音の連打による新古典的な展開が始まります。このように楽曲の統一が図られていない点には、当時のソ連の体制下で自由な創作が制限されていた音楽家の状況が反映されているとも解釈できます。この作風は、アルフレート・シュニトケのポリスタイリズムと共通する部分も見られます。

ピアノ作品

ティシチェンコ自身もピアノの名手であり、多くの録音を残しています。特に、ピアノソナタは彼の重要な作品群であり、現在ノーザンフラワーズから全曲録音がリリースされる予定です。

晩年

晩年、ティシチェンコはダンテの「神曲」に触発された交響曲を五つ作曲するという壮大なプロジェクトを実行しました。そして、2010年12月9日、長い闘病生活の末に生涯を閉じました。

主要作品

ティシチェンコの作品は、舞台作品、映画音楽、管弦楽作品、協奏作品、ピアノ独奏作品、独奏作品、室内楽作品、声楽と管弦楽のための作品、声楽作品、編曲作品と多岐にわたります。

以下は彼の主要な作品の一部です。

舞台作品：バレエ「十二」、オペラ「盗まれた太陽」、音楽劇「チェーホフの戯曲への音楽」など多数。
映画音楽：「一つの惑星で」、「船の誕生」など。
管弦楽作品：交響曲第1番から第9番、交響詩「ダナイド」、「ダンテ交響曲」など。
協奏作品：ピアノ協奏曲、ヴァイオリン協奏曲、チェロ協奏曲など。
ピアノ独奏作品：ピアノソナタ、組曲、練習曲など多数。
独奏作品：ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、オルガン作品など。
室内楽作品：弦楽四重奏曲、ピアノ五重奏曲、室内アンサンブル作品など。
声楽と管弦楽のための作品：カンタータ「レーニンは生きている」、レクイエムなど。
声楽作品：歌曲集、合唱曲など。
編曲作品：モンテヴェルディのオペラ、ショスタコーヴィチの作品などの編曲。

ティシチェンコの音楽は、その多様性と深さから、今後ますます評価が高まることが期待されます。

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