ボルガル

ボルガル：ヴォルガ・ブルガールの古都

ボルガルは、ロシアのタタールスタン共和国南西部に位置する都市で、ヴォルガ川の左岸にあります。人口は約8,285人（2021年）。この地は、中世に栄えたヴォルガ・ブルガールの首都ブルガールの遺跡のすぐそばにあり、その歴史的な重要性から2014年にユネスコの世界遺産に登録されました。

歴史

8世紀、コトラグ・ハンがアゾフ地方からヴォルガ川沿いに北上し、ヴォルガ・ブルガールを建国。この地に都を置いたとされています。彼らは、この地にいたフィン系やスラブ系の民族を支配し、同化させていきました。10世紀には、イスラム教がヴォルガ・ブルガールに広まり、アラブの旅行家イブン・ファドラーンは、当時のハン・アルムシュを「スラブ人の王」と呼んでいます。

12世紀から13世紀にかけて、ロシア人によるブルガールへの侵略が激化し、首都はブルガールからビリャルへと移りました。しかし、ビリャルはモンゴル帝国によって破壊され、15世紀には再び首都がブルガールに戻されました。1430年に成立したカザン・ハン国はカザンを首都としましたが、ブルガルは依然としてイスラム教の中心地としての役割を担っていました。

15世紀には、モスクワ大公ヴァシーリー2世の軍によってブルガールは破壊され、1552年にはイヴァン4世の攻撃によりカザン・ハン国が滅亡し、ブルガル周辺もロシア・ツァーリ国の一部となりました。ロシアによる併合後、ブルガール周辺にはロシア人農民が入植し、ブルガールの廃墟から石材などを切り出して住居を建てました。ピョートル1世はブルガールの遺跡を保存するための勅令を発しましたが、これはロシアでも最初期の遺跡保存のための法律でした。

今日のボルガルは、ヴォルガの支流ベズドナ川の河畔にあったチェルチコヴォ村が1781年に市となった際、この地に住んでいたロシア人農民の名にちなんでスパッスクと改名されたのが元になっています。その後、ソ連時代にはスパッスク＝タタールスキー、クイビシェフと改名されましたが、1953年にヴォルガ川のダム建設により水没の危機に瀕し、現在の場所に移転しました。1991年、ソ連崩壊の時期に、現在のボルガルという名前に戻されました。

ブルガールの遺跡

ブルガールの遺跡には、塔や城壁跡が残っており、10世紀から12世紀にかけての城郭都市の輪郭を今に伝えています。また、アラブの銀貨や銅貨、アラビア語やアルメニア語が書かれた墓石なども発見されており、当時の商人たちの活動を知ることができます。これらの遺跡は、ヴォルガ・ブルガールの歴史と文化を伝える貴重な遺産であり、多くの観光客が訪れています。

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