ボルソルン

ボルソルン（古ノルド語: Bölþorn、Bölthorn）は、北欧神話に登場するヨトゥン族、すなわち霜の巨人です。別名ベルソル（古ノルド語: Bölthor、Bölþorr）とも呼ばれ、この名は「災いの茨」という意味を持っています。

ギュルヴィたぶらかしにおける記述

『スノッリのエッダ』の第一部『ギュルヴィたぶらかし』において、ボルソルンは重要な役割を担っています。彼は、アース神族の主神オーディンの母であるベストラの父として言及されています。つまり、ボルソルンはオーディンにとって母方の祖父にあたる存在となります。この記述は、ボルソルンが神々と深い関わりを持つ巨人であったことを示唆しています。

ただし、ドナルド・A・マッケンジーの著作『北欧のロマン ゲルマン神話』においては、ベストラの父はボルソルンではなく、原初の巨人ユミルであるとされています。この点については、異説が存在することを留意する必要があります。（詳細はベストラの項目を参照）

ハヴァマールにおける記述

『古エッダ』に収録されている詩『ハヴァマール』の第140節では、ベルソル（ボルソルン）に関する別の側面が語られています。ここでは、彼がオーディンに対して9つの神秘的なまじない、あるいは「歌」(galdrar)を教えた無名の巨人の父親であったとされています。このことから、ボルソルンは単なる巨人ではなく、知識や魔法に長けた存在であったと考えられます。オーディンが習得した魔法は、彼の神としての力や知恵の源泉の一つとなった可能性があり、ボルソルンの影響力の大きさを物語っています。

ボルソルンは、北欧神話において、巨人族の中でも特異な存在として描かれています。彼は神々の祖先であり、オーディンに魔法を教えた賢者でもありました。彼の物語は、神話世界の複雑さや、巨人族と神族の間の相互作用を理解する上で重要な手がかりとなります。

参考文献

* V.G.ネッケル他編『エッダ 古代北欧歌謡集』谷口幸男訳、新潮社、1973年、ISBN 978-4-10-313701-6。

もう一度検索