ポリメラス

ポリメラス：サラブレッドの歴史に名を刻んだ種牡馬

ポリメラスは、1902年、イギリスで生まれたサラブレッドの競走馬であり、種牡馬としてその名を歴史に刻んだ伝説的な存在です。競走馬としての成績は決して華々しいものではありませんでしたが、種牡馬としての活躍は目覚ましく、その子孫は現代サラブレッドの8割以上に繋がるほど、世界的な影響力を持つに至っています。

生い立ちと競走生活

ポリメラスの父はアスコットゴールドカップ優勝馬シリーン、母はメイドマリアンでした。シリーンは初年度産駒の不振からアルゼンチンに輸出されましたが、後にその産駒からダービー馬が生まれるなど、その能力は再評価されました。一方、母メイドマリアンは未勝利馬でしたが、ステークス競走勝ち馬を産んだ実績から、クルー伯爵によって繁殖牝馬として購入されました。

「ポリメラス」の名は、ホメーロスの『イリアス』に登場するトロイア戦士に由来し、ギリシャ神話にちなんだ父の血統名と調和しています。1歳からジョン・ポーター調教師のもとで育成され、1904年に競走馬デビューを果たしました。デビュー戦では2着とまずまずのスタートを切りましたが、その後は同期のライバル、キケロ（クルー伯爵の義父所有馬）に幾度となく敗れ、主要競走では勝利を掴むことができませんでした。

2歳時は8戦3勝。リッチモンドステークス、ロウスメモリアルステークス、クリテリオンステークスで勝利を収めたものの、クラシックレースでは結果を残せず、その才能に疑問符がつく結果となりました。3歳となった1905年には、ダービーへの出走を回避。セントジェームズパレスステークスで二冠牝馬チェリーラスの2着、トリエニアルステークスでランジビーを破るなど、持ち前の実力を発揮する場面もありましたが、エクリプスステークスではヴァルドールに敗れるなど、一貫した活躍とはなりませんでした。

3歳シーズンでは、セントレジャーステークスで2着、ジョッキークラブステークスでも2着に入る健闘を見せ、ガトウィックステークスで勝利を収めてシーズンを終えました。しかし、この勝利はポーター調教師の最後の勝利となり、ポーターの引退と合わせて、ポリメラスは3000ポンドで売却されることとなりました。

4歳となった1906年は、精彩を欠いたシーズンとなりました。ベイカー調教師の元で不振が続き、フランク・ハーティガン厩舎へと転厩した後、競売にかけられ、ソロモン・バーナート・ジョエルによって購入されます。ジョエルのもとでは再び輝きを取り戻し、デュークオブヨークステークス、ケンブリッジシャーハンデキャップ、チャンピオンステークスと3連勝を達成。5歳シーズンは2戦1勝で競走生活を終えました。

種牡馬としての成功

引退後は種牡馬となり、ソロモン・ジョエルが所有するメイデンアールスタッドで繋養されました。当初はクラシック勝ち馬に比べて評価は低かったものの、父シリーンとは対照的に、その種牡馬としての能力はすぐに発揮されました。

ポリメラスはイギリスクラシック競走優勝馬を5頭輩出するなど、大きな成功を収めました。種付け料は当初98ギニーでしたが、後に300ギニーにまで高騰し、その産駒は数々の賞金を獲得しました。5度に渡ってイギリスリーディングサイアーに輝き、220頭以上の勝ち上がり馬を送り出したのです。

特にパーシモン産駒の牝馬との相性が良く、ウォークラウドやメイデンアールなどがその組み合わせから生まれました。また、セントサイモン系やガロピン系の血統を持たなかったことが、その成功要因の一つとして挙げられます。

その中でも特に有名なのが、ファラリスです。ファラリスは種牡馬として大成功し、ファラリス系と呼ばれる世界の主流血統を築き、ポリメラスの血統を世界中に広めました。

代表産駒

ポリメラスは多くの優秀な競走馬を輩出しましたが、ここでは特に有名な産駒をいくつか紹介します。

ブラックジェスター: 1914年セントレジャーステークス優勝馬。
ポマーン: 1915年イギリス三冠馬（第一次世界大戦の影響で代替開催）。
フィフィネラ: 1916年ニューダービーとオークスを制覇した牝馬。
キンナ: 1920年1000ギニーステークス優勝馬。
ユーモリスト: 1921年ダービーステークス優勝馬。
ファラリス: 種牡馬として大成功し、ファラリス系を築いた。
ポリメリアン: アメリカで種牡馬として成功。
ポリーフリンダーズ: 多くの名馬を輩出した牝系を形成。
ウォークラウド: アメリカのプリークネスステークス優勝馬。
メイデンアール: セントレジャーステークス2着馬。

これらの産駒以外にも、多くのステークス競走勝ち馬や、種牡馬として成功した馬を輩出しました。

ポリメラスのその後と評価

種牡馬生活初期に転倒事故で負傷し、晩年はリウマチにも悩まされたポリメラスは、1924年、24歳で安楽死となりました。

競走馬としての成績は平凡でしたが、種牡馬としては比類なき成功を収め、現代サラブレッドの礎を築いた、まさにサラブレッド界のレジェンドと言える存在です。その血統は、現在も世界中の競馬界に大きな影響を与え続けています。

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