ユーモリスト

ユーモリスト：悲劇のダービー馬

1921年、イギリスダービーの栄冠を掴んだサラブレッド、ユーモリスト。その華々しい勝利からわずか3週間後、彼は突如としてこの世を去りました。本記事では、ユーモリストの生涯、華麗なる血統、幾多の苦難を乗り越えた競走生活、そして悲劇的な最期までを詳細に紐解きます。

輝かしい血統と生い立ち

ユーモリストは1918年、イギリスの資産家ジャック・バーナート・ジョエルが所有するチャイルドウィックバリースタッドで誕生しました。その血統はまさに華麗の一言。父は種牡馬として名高いポリメラス、母は1000ギニーステークスとオークスステークスを制した二冠牝馬ジェストです。ジェストはセントレジャーステークス優勝馬ブラックジェスターの半姉でもあり、優れた競走能力と気性強さを受け継いでいました。ユーモリストは栗毛の馬で、幅広のたてがみと精悍な顔立ちが特徴でした。母譲りの競走能力を受け継ぎつつも、気性は穏やかで人懐っこく、誰からも愛される馬でした。

期待と苦悩の競走生活

チャールズ・モートン調教師のもと、1920年に2歳でデビュー。デビュー戦はエプソム競馬場のウッドコートステークスでしたが、直前に体調を崩し、出走が危ぶまれました。幸いにも回復し出走を果たしましたが、終盤に失速し、辛うじて勝利を収めました。その後も、持病とも言える咳に悩まされ、レースへの出走を回避せざるを得ない状況が続きました。モートン調教師は、ユーモリストの並外れた能力と、常につきまとう健康不安に常に頭を悩ませていました。

シャンペンステークスではレモノーラにクビ差で敗れ2着。しかし、バッケナムステークスとクリアウェルステークスでは見事勝利を収め、その実力を証明しました。ミドルパークプレートでは2着と健闘し、将来への期待を高めました。冬季の休養期間を経て、翌1921年シーズンに臨みました。

ダービー制覇と悲劇の結末

1921年、2000ギニーステークスでは3着に終わりますが、続くダービーステークスで、鞍上スティーブ・ドナヒューとのコンビで、見事優勝を果たしました。レースでは、終盤にクライグアンエランやアスターとの接戦を制し、クビ差で勝利を収めました。しかし、この激戦はユーモリストの体に大きな負担をかけました。

ダービー優勝からわずか3週間後、ユーモリストは鼻出血を起こし、調教を中止。その後、馬房で血を流して死んでいるのが発見されました。馬房の壁には血痕が飛び散っており、激しい呼吸困難に陥っていたことを示していました。検死の結果、死因は結核による肺出血と判明しました。

ユーモリストはチャイルドウィックバリースタッドに埋葬されました。彼の墓標には大きな石が置かれ、ゼラニウムの花が飾られています。数か月後には母ジェストも亡くなり、ユーモリストと共に埋葬されました。

伝説として語り継がれる名馬

ユーモリストは、その類まれな能力と悲劇的な最期により、多くの人の記憶に深く刻まれました。短い競走生活の中で、彼はその才能と気品を余すことなく発揮し、人々に感動と惜別の念を与えました。彼の名前は、今もなお、ダービーの歴史に燦然と輝く、永遠の悲劇のヒーローとして語り継がれています。

主な勝鞍

1920年：ウッドコートステークス、バッケナムステークス、クリアウェルステークス
1921年：ダービーステークス

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