ポリュドーラー

ポリュドーラー

ポリュドーラー（古希: Πολυδώρα, Polydōrā）は、ギリシア神話における重要な女性キャラクターの一人です。彼女は「ポリュドラ」とも表記されることがありますが、彼女の物語は数多くのバリエーションを持ちます。その中で、特に注目すべきは三人の異なる家系に属するポリュドーラーです。

ペリエーレースの娘

最初のポリュドーラーは、ペリエーレースの娘です。彼女はペーレウスと結婚し、子供としてメネスティオスを授かります。ただし、実際にはメネスティオスの父親は河神の一人、スペルケイオスであったとされています。このように神話では、親子関係における複雑さがしばしば描かれます。ポリュドーラーの物語は、家族関係や遺伝的な運命に焦点を当てています。

ペーレウスの娘

次に紹介するポリュドーラーは、ペーレウスと王女エウリュティオーンの娘、アンティゴネーとの間に生まれた娘です。彼女はボーロスという人物と結婚しましたが、その後に河神スペルケイオスとの関係があったため、同じくメネスティオスを生むことになりました。ここでも家族の関係が複雑に絡み合い、女神や神々の運命が人間の生活に影響を及ぼす様子がうかがえます。

メレアグロスの娘

もう一人のポリュドーラーは、カリュドーンの王子メレアグロスとクレオパトラーの娘です。彼女の物語は特に悲劇的で、叙事詩『キュプリア』によると、ポリュドーラーはプローテシラーオスという男性と結婚しました。しかし、戦争における夫の死が彼女に深い悲しみをもたらし、最終的には自らの命を絶ってしまいます。母方の祖母マルペーッサ、母クレオパトラー、そしてポリュドーラー自身の運命が共通しているのは、深い愛とその喪失から来る悲劇であり、彼女たちがいずれも夫に先立たれたことです。

その他のポリュドーラー

ポリュドーラーという名前は他にも存在し、例えば大洋神オーケアノスとテーテュースの間に生まれた3000人の娘たち、オーケアニスの一人としても知られています。また、ダナオスの娘の中の一人でもあり、彼女もまたスペルケイオスとの間に娘ドリュオプスを生んでいます。

まとめ

ポリュドーラーは、ギリシア神話の中でいくつもの顔を持つ多面的なキャラクターです。彼女の物語は、親子関係や愛、そして運命の悲劇が交錯する複雑なものであり、それぞれの物語は文化的な背景や人々の価値観を反映しています。その家系や悲劇的な運命を通して、ポリュドーラーは今なお多くの人々に語り継がれています。

参考文献

• - アポロドーロス『ギリシア神話』高津春繁訳、岩波文庫（1953年）
• - アントーニーヌス・リーベラーリス『メタモルフォーシス　ギリシア変身物語集』安村典子訳、講談社文芸文庫（2006年）
• - パウサニアス『ギリシア記』飯尾都人訳、龍溪書舎（1991年）
• - ヘシオドス『神統記』廣川洋一訳、岩波文庫（1984年）
• - ホメロス『イリアス（下）』松平千秋訳、岩波文庫（1992年）
• - 高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』、岩波書店（1960年）

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