ポリュボス

ギリシア神話に登場する「ポリュボス」（古希: Πόλυβος, Polybos）という名前は、一人の特定の人物を指すのではなく、複数の異なる登場人物に見られる名称です。その中でも特に広く知られているのは、コリントスを治めた王と、ペロポネソス半島の都市シキュオーンの王です。以下にそれぞれの人物について説明します。

コリントスの王
コリントスの王であるポリュボスは、ギリシア悲劇の主人公として名高いオイディプースの養父として最もよく知られています。彼の妻とされる人物には諸説あり、ペリボイア、メロペー、あるいはメドゥーサといった名前が伝えられています。赤子だったオイディプースは、実の両親によって捨てられ、ポリュボス王夫妻に引き取られて実の子として育てられました。オイディプースという名は、「腫れ上がった足」を意味するとされ、一説にはポリュボスによって名付けられたとも言われています。成長したオイディプースは、自らの運命を知るためにデルポイのアポローン神託所を訪れますが、そこで「父を殺し、母と交わる」という恐ろしい予言を受けます。この予言の成就を回避しようと考えたオイディプースは、ポリュボス夫妻を実の両親であると信じ、コリントスへは二度と戻らない決意をします。その旅の途中で彼は運命に導かれるままにテーバイへと至り、スピンクスの謎を解いて街を救い、テーバイの王となりました。オイディプースがテーバイを治めている間に、彼の養父であるポリュボスは穏やかに世を去ったと伝えられています。

シキュオーンの王
もう一人の主要なポリュボスは、シキュオーンの王位にあった人物です。彼の出自は神話的であり、父は神々の伝令であるヘルメース神、母はシキュオーンとその娘ゼウクシッペーの間に生まれたクトノピュレーであったとされています。このポリュボスにはリューシアナッサという娘がおり、彼女はアルゴス王タラオスと結婚して、後の七将の遠征で知られる英雄アドラーストスの母となりました。タラオスによってアルゴスを追放されたアドラーストスは、母方の祖父であるシキュオーン王ポリュボスの宮廷に庇護を求めました。ポリュボスは彼を温かく受け入れ、やがてポリュボスが亡くなった後、アドラーストスはアルゴスへ帰還するまでの間、シキュオーンの王位を継承してこの地を治めたとパウサニアスは記しています。

その他のポリュボス
上記の著名な二人以外にも、ギリシア神話の様々な場面に「ポリュボス」という名前の人物が登場します。

トロイアの賢人アンテーノールと妻テアーノーの間には多くの息子がいましたが、その一人にもポリュボスがいます。彼はトロイア戦争において、父や兄弟たちと共にトロイアのために戦いました。
ホメロスの『オデュッセイア』には、エジプトのテーバイに住むポリュボスという人物が登場します。彼の妻はアカンドレーで、トロイア戦争から帰国する途中に立ち寄ったスパルタ王メネラーオスとその妻ヘレネーを歓待し、貴重な贈り物を授けました。
同じく『オデュッセイア』には、パイアーケス人の優れた工匠としてポリュボスが登場します。彼は、パイアーケス王アルキノオスの子であるハリオスとラーオダマースが使うための見事な毬を製作したと描写されています。
イタケー島でオデュッセウスの妻ペーネロペーに群がった求婚者たちの中にも、ポリュボスという名の人物が二人見られます。一人はザキュントス島出身の求婚者で、オデュッセウスが帰還して求婚者たちを虐殺した際に、忠実な豚飼いエウマイオスに討たれました。もう一人は、有力な求婚者の一人であるエウリュマコスの父として言及されています。

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