ポリュメーデー

ポリュメーデー

ポリュメーデー（古希: Πολυμήδη, Polymēdē）は、古代ギリシアの神話世界にその名が見られる女性の一人です。長母音を省略してポリュメデと表記されることもあります。

彼女はアウトリュコスの娘として生まれました。兄弟にはアンティクレイアやアイシモスがいます。特にアンティクレイアは、後にギリシア最大の英雄の一人となるオデュッセウスの母として知られています。

ポリュメーデー自身の家族としては、古代ギリシアの神話学者アポロドーロスの記述によると、彼女はテッサリアー地方のイオールコス王国の正当な王位継承者であったアイソーンと結ばれました。そして、この夫婦の間から、後世に名を知られる大英雄イアーソーンと、もう一人の息子であるプロマコスが生まれたと伝えられています。

ただし、アイソーンの妻については、他の古代の文献において異なる名前が挙げられていることも付記しておく必要があります。例えば、叙事詩人ヘーシオドスの作品の中では、アイソーンの妻はポリュメーレーという名で記されており、また別の伝承においてはアルキメデーという名が挙げられています。これは、古代ギリシア神話が多様な伝承を持つことを示す一例と言えるでしょう。

ポリュメーデーの生涯は、息子イアーソーンの運命と深く結びついています。イアーソーンが叔父であるイオールコス王ペリアースの命により、遠くコルキスへと金羊毛を求めて旅立った後、ペリアースはしばらくの間、甥の帰還を待っていました。しかし、時が経つにつれてペリアースは待ちきれなくなり、イアーソーンの父であり、王位継承権を持つアイソーンを排除することを画策します。

ペリアースの企てによって追い詰められたアイソーンとポリュメーデーは、絶望的な状況に立たされます。彼らは、まだ幼かった息子プロマコスを後に残して、自らの命を絶つという悲劇的な選択をしました。

その最期は、夫婦それぞれに異なった方法で訪れます。アイソーンは、ある供儀の最中に牡牛の血を飲むという異様な形で命を落としたと伝えられています。一方、ポリュメーデーは、夫を死に追いやったイオールコス王ペリアースに対し、激しい呪いの言葉を浴びせながら、自ら首を吊って果てたと語られています。

さらに悲劇はここで終わりませんでした。両親を一度に失い、独り残された幼いプロマコスもまた、ペリアースによって容赦なく殺されてしまったと伝えられています。このように、ポリュメーデーは息子イアーソーンの旅立ちを境に、夫と共に自害し、幼子まで失うという、あまりにも過酷で悲しい運命をたどった女性として神話に名を残しています。

彼女の物語は、権力争いの犠牲となった家族の悲劇を描いており、英雄イアーソーンの物語の背景にある、人々の苦しみや犠牲の一端を伝えています。

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