ポルトゥヌス神殿

ポルトゥヌス神殿：ローマの古代建築

ポルトゥヌス神殿（Tempio di Portuno）は、イタリアのローマにある古代の神殿で、ポルトゥヌス神に捧げられました。この神殿は、テヴェレ川のほとり、フォルム・ボアリウムに位置しており、かつてはフォルトゥナ・ウィリリス神殿（Fortuna Virilis）と誤って呼ばれることもありました。

フォルム・ボアリウムは、テヴェレ川の港を見晴らす場所にあり、ポルトゥヌス神殿からは、オスティアから家畜を乗せた船が入港する様子を見渡すことができました。この場所は、古代ローマにおける交易や物流の中心地として重要な役割を果たしていました。

神殿の構造と建築様式

ポルトゥヌス神殿は、紀元前75年に建設され、紀元前1世紀に修復されたと考えられています。神殿は、階段付きの高い壇上に建てられた、四角い建物です。正面には4本のイオニア式円柱からなるポルチコがあり、その奥には2本の柱が配置されています。

この神殿の建築様式の特徴は、「擬周翼式」であることです。これは、ポルチコの円柱は独立しているものの、長辺と裏面の柱が内陣の壁に埋め込まれている形式を指します。一方、パルテノン神殿のように、周囲全体に独立した円柱が巡らされている形式は「周柱式」と呼ばれ、両者は区別されます。神殿の建材には、凝灰岩とトラバーチンが用いられ、表面は化粧しっくいで仕上げられていました。

保存状態と歴史

ポルトゥヌス神殿が良好な状態で保存されているのは、872年に教会に転用され、サンタ・マリア・エジプツィア（Santa Maria Egyziaca）に捧げられたことが大きな要因です。この転用により、神殿は破壊を免れ、中世以降もその姿を保つことができました。

この神殿のイオニア式円柱は特に評価が高く、18世紀の文献にもスケッチが掲載されています。しかし、かつて凝灰岩とトラバーチンを覆っていた化粧しっくいは、現在では剥がれ落ちています。

周辺の遺跡

フォルム・ボアリウムには、ポルトゥヌス神殿の南東に、円形のヘラクレス・ウィクトール神殿も存在します。この地域は、古代ローマの宗教的、商業的な中心地として重要な場所であったことが伺えます。

まとめ

ポルトゥヌス神殿は、古代ローマの建築技術と宗教観を今に伝える貴重な遺跡です。イオニア式の美しい建築様式や、擬周翼式という独特な構造、そしてその歴史的な背景は、訪れる人々に古代ローマの息吹を感じさせてくれます。


参考資料
Temple of Portune
Mary Ann Sullivan, "Temple of Fortuna Virilis (Temple of Portunus)"
* Images of Temple of Fortuna Virilis (or Portunus)

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