ポール・ウェストファル

ポール・ダグラス・ウェストファル（Paul Douglas Westphal, 1950年11月30日 - 2021年1月2日）は、NBAの元選手、そして指導者としてバスケットボール界にその名を刻みました。カリフォルニア州トーランス出身で、南カリフォルニア大学を卒業。193cmの身長と88kgの体重で、ガードとして活躍しました。

選手としてのキャリア

ウェストファルは、航空高等学校を経て南カリフォルニア大学に進学。1971-72シーズンには平均20.3得点、5.3リバウンド、5.1アシストを記録し、オールアメリカ2ndチームに選出されるなど、その才能を開花させました。1972年のNBAドラフトでは、ボストン・セルティックスから全体10位で指名を受け、NBAの世界へ足を踏み入れます。

ジョン・ハブリチェックやデイブ・コーウェンスといったスター選手を擁する当時のセルティックスは、リーグ屈指の強豪。ウェストファルはルーキーとして1974年のNBAファイナル制覇を経験しますが、出場機会は限られ、レギュラーシーズンでは平均4.1得点、プレーオフでは平均3.9得点にとどまりました。しかし、2年目の1973-74シーズンにはローテーションに定着し、1974-75シーズンには平均9.8得点まで成績を伸ばしました。

フェニックス・サンズでの活躍

1975-76シーズン前、チャーリー・スコットとのトレードでフェニックス・サンズへ移籍。セルティックスでは控え選手だったウェストファルですが、サンズではエースとしてその才能を爆発させます。前年の成績を大幅に上回る平均20.5得点、5.4アシスト、2.6スティールを記録し、チームを牽引。サンズは42勝40敗で6年ぶりのプレーオフ進出を果たし、勢いそのままにNBAファイナルへ進出しました。

ファイナルの相手は、奇しくも古巣のボストン・セルティックス。レギュラーシーズンの成績ではセルティックスが圧倒的に有利でしたが、サンズは善戦し、2勝2敗で迎えた第5戦は、ファイナル史上最高の試合として語り継がれています。オーバータイムにもつれ込む激戦の中、ウェストファルはエースとしてチームを鼓舞しましたが、最後はセルティックスの層の厚さに屈し、128-126で敗れました。その後、第6戦も落としたサンズは、2勝4敗で敗退となりました。

翌1976-77シーズン、サンズはプレーオフ進出を逃しますが、ウェストファル個人は平均21.3得点、5.7アシストを記録し、初のオールNBA1stチーム入りを果たします。1977-78シーズンにはキャリアハイとなる平均25.2得点を記録し、チームもプレーオフに復帰。ウェストファルの活躍とともに、サンズは最初の黄金期を迎え、1979-80シーズンには55勝を記録しました。ウェストファル自身も4年連続でオールNBAチームに選出され、オールスターにも出場し続けました。

晩年とコーチとしてのキャリア

1980-81シーズン前にシアトル・スーパーソニックスへ移籍しますが、故障に苦しみ、出場機会は減少。その後ニューヨーク・ニックスを経て、1983-84シーズンに古巣サンズへ復帰し、現役を引退しました。

引退後はコーチとして、1992年にフェニックス・サンズのヘッドコーチに就任。チャールズ・バークレーらを擁し、チームをNBAファイナルへ導きましたが、マイケル・ジョーダン率いるシカゴ・ブルズに敗れ、優勝はなりませんでした。その後、シアトル・スーパーソニックスやサクラメント・キングスでもヘッドコーチを務め、指導者としての才能も発揮しました。

ポール・ウェストファルは、選手としても指導者としても、その情熱と才能でバスケットボール界に多大な影響を与えた人物として、記憶されるでしょう。

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