ポール・コーダー

ポール・ウォルフォード・コーダー

ポール・ウォルフォード・コーダー（Paul Walford Corder、1879年12月14日 - 1942年8月6日）は、20世紀初頭に活動したイングランドの作曲家、そして優れた音楽教育者です。

生涯

コーダーは、ロンドンのピムリコ地区にて、音楽家であるフレデリック・コーダーと妻ヘンリエッタ・ウォルフォードの子として生を受けました。彼は1880年3月1日にロンドンのセント・ゲイブリエル教会にて洗礼を受けています。音楽一家に育ったコーダーは、父が教鞭を執っていた名門・王立音楽アカデミーに進学し、父フレデリックから直接指導を受けました。学業においては作曲の才能を開花させ、1901年には権威あるゴーリング・トーマス奨学金を授与されるなど、将来を嘱望されました。

アカデミー卒業後もその繋がりは深く、1907年には作曲と和声学の教授として母校の教壇に立つことになります。教育者としても長く貢献し、多くの後進を育成しました。

彼の芸術的な背景には、家族を通じた繋がりがありました。叔母のローザ・コーダーは画家であり、ラファエル前派の主要人物であるダンテ・ゲイブリエル・ロセッティの肖像画を描いたことでも知られています。この叔母との関わりを通じて、コーダーはラファエル前派の芸術運動から強い影響を受け、その美学や主題が彼の創作活動にも反映されました。

私生活では、同時代の著名な作曲家アーノルド・バックスと非常に親しい間柄でした。二人は深い友情で結ばれ、共にコーンウォール地方で休暇を過ごすなど、公私にわたる交流がありました。バックスはその友情の証として、自身の作品である歌曲「Aspiration」（1909年）や大規模な交響曲第4番（1931年）をコーダーに献呈しています。このことからも、音楽界におけるコーダーの立場や人望がうかがえます。

居住地としては、サリー州ネトレー・ヒースにある白いコテージで、晩年まで長きにわたり静かに暮らしました。

作品

ポール・ウォルフォード・コーダーの作品は多岐にわたります。オペラ、バレエ、カンタータ、管弦楽、室内楽、ピアノ曲など、様々なジャンルで作曲を行いました。しかし、残念ながら彼の多くの管弦楽作品は生前に出版される機会が少なく、現在では広く知られていないものが多数を占めます。一方で、鍵盤楽器のための作品には一部が出版され、ある程度の認知を得ているものも存在します。彼の音楽には、アカデミーで培った確かな技術に加え、ラファエル前派からの影響と思われる叙情的かつ色彩豊かな表現が見られます。

主要な作品としては、以下のものが挙げられます。

オペラ「Rapunzel」
オペラ「Grettir the Strong」
バレエ「The Dryad」
合唱と管弦楽のための「A Song of Battle」
男声合唱と管弦楽のための「A Song of the Ford」
バリトンと管弦楽のための「Four Sea Songs」
The Moonslave, a terpsichorean fantasy
A Song of the Bottle
Spanish Waters
Sunset and Sunrise
Pelleas and Melisande
序曲「Cyrano de Bergerac」
Gaelic Fantasy
Morar
歌詞のない音楽劇「Dross」
ヴァイオリン協奏曲
5つの管弦楽のための音画「Along the Seashore」
The Ebbing Tide
The Sea Cavern
Seagull's Rock
The still hour of dusk
The Call of the Sea
弦楽四重奏曲
ヴィオラとピアノのための「Fountains」
ピアノのための「創作主題による変容」
ピアノのための「9つの前奏曲」
3つの練習曲
パッサカリア
ロマンティックな練習曲
英雄的哀歌
Spanish Waters
ある秋の思い出

これらの作品の一部は、国際楽譜ライブラリープロジェクト（IMSLP）などを通じて楽譜が入手可能であり、彼の音楽への関心を持つ人々によって再評価される機会が待たれています。

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