マイコンBASICマガジン

マイコンBASICマガジン：伝説のプログラミング雑誌とその歴史

『マイコンBASICマガジン』（略称：ベーマガ）は、電波新聞社が1982年から2003年まで発行していた、パソコンユーザー、特にホビーユーザーを対象とした月刊誌です。B5判からA4変形判へと変遷し、毎月8日（当初は10日）に発売されました。

ベーマガを特徴づけるもの

ベーマガが他のパソコン雑誌と一線を画していたのは、何と言っても読者投稿によるプログラムの掲載です。当時、パソコンは8ビット機が主流で、BASICインタプリタが搭載されていました。メーカーによってBASIC言語の仕様が異なり、互換性も低かったため、ベーマガでは各機種に対応したプログラムリスト（ソースコード）を掲載。読者はそれを手入力し、主にゲームを楽しみました。 掲載されたプログラムはBASICが中心でしたが、機械語を併用したものや、一部機械語のみのプログラムも存在しました。後期には、C言語、Delphi、HSPといった他の高級言語のプログラムも掲載されるようになりました。

誌名に「BASIC」と冠しながら、BASIC以外の言語も取り上げたのは、単なる言語名ではなく「基本」を大切にするという編集姿勢の表れでした。誌面ではしばしば「ベーマガは教育誌」とユーモラスに表現され、プログラムには変数の用途やアルゴリズムの説明、改造方法などの解説も添えられていました。そのため、ゲームを楽しむだけでなく、プログラミングの学習にも役立ち、多くのIT業界のプロフェッショナルを輩出したと言われています。

ゲームプログラム以外には、カロリー計算やキャラクタエディタといった実用的なプログラムも多数掲載。1986年頃からは、ゲームメーカーの許可を得て、ゲームミュージックのプログラムや楽譜も掲載されるようになりました。

当時、プログラムリスト掲載誌としては『I/O』、『PiO』、『ログイン』などがありましたが、これらは機械語のダンプリストを掲載することが多く、読解や修正が困難でした。一方、ベーマガのBASICは高級言語であるため、記述内容の理解やエラー修正が容易だった点が大きな違いでした。

ベーマガの変遷：プログラミング誌から総合ゲーム情報誌へ

創刊当初は「マイコン」という言葉がパソコンを指すことが多かった時代背景があり、誌名に「マイコン」と冠されています。 創刊号から連載された「移植テクニックマスター大作戦」は、機種間のBASIC方言の違いを解説し、他機種のプログラムも活用できるよう工夫されたものです。

ベーマガは、専門性の高い『月刊マイコン』や『月刊アスキー』、そして『I/O』、『RAM』といった他誌と競合しながら、読者投稿型のプログラミング雑誌としての地位を確立しました。

1983年11月号からは、アーケードゲーム情報などを掲載した別冊付録「スーパーソフトマガジン」が登場。ナムコ開発室提供のゼビウスに関する貴重な情報なども掲載され、ゲーム情報誌としての側面も強まりました。 ハイスコアランキングの掲載も大きな特徴で、多くのゲーマーを熱狂させました。アダルトゲーム情報は一切掲載しないという方針も、ベーマガの特徴でした。

その後、パソコンゲームの攻略法記事やレビュー記事の掲載も増え、ゲーム関連の記事が技術系記事を上回る時期もありました。ナムコやセガ、タイトーといったメーカーとの深い関係により、高品質なゲーム紹介記事も数多く掲載されましたが、ゲームメーカーの増加により、すべてのメーカーを網羅することが難しくなり、徐々に読者層を他誌に奪われることになります。

また、1989年から1990年にかけてはDTMに特化した別冊付録「レッツプレイ！コンピュータ・ミュージック」を発行し、後に独立した『Computer Music Magazine』も一時発行されました。

ベーマガの斜陽と休刊

1990年代に入ると、パソコンの低価格化やインターネット普及により、プログラム投稿誌としての需要は減少。1999年4月号のリニューアルでは、ページ数の削減やゲーム関連記事の減少が行われ、読者からの反発を招きました。 その後も中高生向けへの路線変更などを試みましたが、発行部数は減少を続け、2003年5月号をもって休刊となりました。

休刊後も、ベーマガの功績は高く評価されており、2010年にはCEDEC AWARDSで最優秀賞を受賞。2015年と2018年には、元編集者やライターによるトークイベントも開催されました。

電子工作マガジンでの復活

ベーマガの源流である『ラジオの製作』の流れを汲む『電子工作マガジン』にて、2015年から「マイコンBASICマガジン」のコーナーが復活。2018年からは別冊付録として発行されるようになりました。

主要な連載記事・コーナー

ベーマガには数多くの連載記事・コーナーがありました。代表的なものとしては、読者投稿プログラムを掲載する「BM特選プログラム・コーナー」、短文投稿コーナー「OFコーナー」、くりひろしによる漫画「パソコンレクチャー」、ゲームレビューコーナー「チャレンジ!パソコンアドベンチャー・ゲーム」、読者参加型コーナー「読者の闘技場」などがあります。これらのコーナーはベーマガ独自の個性と魅力を形成し、多くの読者から愛されました。 また、多くのライターや編集者もベーマガの歴史に彩りを添えています。

書籍・ムック

ベーマガでは、『プログラム大全集シリーズ』、『マイコンBASICマガジンDELUXE』などの書籍やムックも多数出版されました。

まとめ

『マイコンBASICマガジン』は、単なるパソコン雑誌ではなく、多くのプログラマーを育成し、日本のコンピュータ文化に大きな影響を与えた、時代を象徴する雑誌でした。 その歴史と功績は、これからも語り継がれていくでしょう。

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