ラジオの製作

『ラジオの製作』は、1954年にラジオ技術社からラジオキットの組み立てパンフレットとして誕生しました。その後、電波新聞社に移管され、月刊誌として本格的にスタートしました。創刊当初から「だれでもできる」というキャッチフレーズが表紙を飾り、読者層は広範に及びました。当時、高価だったラジオやオーディオ機器を自作するニーズに応え、部品セット（キット）販売と連動した製作記事が人気を博しました。ライバル誌には誠文堂新光社の『初歩のラジオ』があり、共に電子工作分野を牽引しました。

1970年代には、製作記事の範囲がエレクトロニクス全般に拡大し、アマチュア無線、BCL（海外短波放送受信）など、電波関連分野の記事も充実しました。特にBCLブーム時には、専門家による記事が他誌を圧倒するほどの情報量を提供し、ブームを牽引しました。市民ラジオ愛好家に対しては「CB'er」という愛称を与え、イベントを開催するなど、健全な普及活動にも力を注ぎました。1989年には特小トランシーバーの制度化に貢献しました。また、パソコンの普及にもいち早く対応し、ハードウェア関連の記事を掲載しました。1977年にはコンピュータ総合誌『マイコン』が独立し、1981年には別冊付録『マイコンBASICマガジン』が生まれました。この『ベーマガ』は後に独立し、最盛期には30万部近い発行部数を記録するに至りました。

また、編集長の大橋太郎氏の叔父が芸能山城組のリーダーであったことから、電子音楽にも傾倒し、冨田勲氏の紹介でシンセサイザー製作記事が掲載されるなど、音楽分野にも独自の展開を見せました。

1990年代に入ると、BCLブームの終焉と電子工作の人気低迷により、雑誌としての発行を維持することが難しくなり、1999年4月号を最後に月刊誌としての発行を終了しました。その後、ムック形式での刊行が発表されましたが、1号のみで廃刊となりました。しかし、2008年には、事実上の後継誌となる『電子工作マガジン』が創刊され、電子工作分野において紙媒体が復活しました。2015年からは『マイコンBASICマガジン』のコーナーも復活し、往年の読者から支持を得ています。BCLに関しては、『電子工作マガジン』では扱われなくなりましたが、2019年には『BCLマニュアル令和版』が発売され、BCL関連の書籍に再参入しました。そして、2020年には『電子工作マガジン』別冊として、復刻版が刊行され、往年のファンを魅了しました。

『ラジオの製作』は、日本の電子工作文化の発展に大きく貢献した雑誌であり、その影響は今も色褪せることはありません。掲載された記事や製作記事は、電子工作愛好家にとって貴重な情報源であり、その歴史は今も語り継がれています。ラジオの製作は、単なる雑誌ではなく、日本の電子工作、ひいては技術発展の一翼を担ったと言えるでしょう。多くの技術者やエンジニアを輩出し、そのDNAは現代の電子工作文化にも深く根付いています。その功績は計り知れません。

また、同誌は電子工作の分野だけでなく、アマチュア無線、BCL、パソコン、電子音楽といった多様な分野をカバーし、それぞれの分野の発展にも貢献しました。当時の若者たちにとっては、最新の技術や情報を得るための貴重な媒体でした。この雑誌を通して電子工作に触れ、技術の世界に足を踏み入れた人も少なくありません。

復刻版の発行は、当時の読者だけでなく、若い世代にも電子工作の楽しさを伝える良い機会となりました。かつて『ラジオの製作』を読んでいた人たちが、その思い出を語り合い、新たな読者もこの雑誌の歴史に触れ、電子工作への興味を深めていることでしょう。

『ラジオの製作』は、日本の電子工作史において、重要な役割を果たした雑誌として、その名を刻み続けています。

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