マイヤーリング

テレビ映画『マイヤーリング』について

1957年にアメリカで制作されたテレビ映画『マイヤーリング』は、当時夫婦だったオードリー・ヘプバーンとメル・ファーラーが主演を務め、大きな話題を呼んだ作品です。この映画は、19世紀末のオーストリア＝ハンガリー帝国で実際に起きた皇太子ルドルフと男爵令嬢マリー・ヴェッツェラの心中事件「マイヤーリンク事件」を題材としています。

制作と放送

本作は、1957年2月4日に米NBCのテレビ番組『プロデューサーズ・ショーケース』の一環として、一度きり全米で生放送されました。当時の技術では、生放送された映像を保存することが難しく、長らく「幻の作品」とされてきました。しかし、キネコと呼ばれる特殊な録画技術によってモノクロ映像が保存されており、それをデジタル技術で復元したものが、2014年1月4日から日本で劇場公開されました。

原作

映画の原作は、クロード・アネの小説『うたかたの恋』（1930年）です。この小説は、マイヤーリンク事件を題材にしており、アナトール・リトヴァク監督は1936年にも同原作を映画化しています。本作は、リトヴァク監督にとって2度目の映像化となります。

ストーリー

物語は、オーストリア＝ハンガリー帝国の繁栄を背景に、ルドルフ皇太子とマリー・ヴェッツェラの悲恋を描いています。ルドルフは、父である皇帝フランツ・ヨーゼフ1世が決めた政略結婚に不満を抱き、多くの女性と関係を持っていました。そんな中、17歳の令嬢マリーと出会い、運命的な恋に落ちます。しかし、妻子ある皇太子と厳格な男爵家の娘であるマリーの恋は、皇帝によって引き裂かれます。絶望したルドルフは、マリーと共にマイヤーリングの狩猟館で一夜を過ごし、眠るマリーを射殺した後、自らも命を絶ちます。

キャスト

マリー・ヴェッツェラ：オードリー・ヘプバーン - 男爵家の令嬢。
ルドルフ：メル・ファーラー - 妻子のある皇太子。
ターフェ首相：レイモンド・マッセイ - ルドルフと対立する。
皇后：ダイアナ・ウィンヤード - ルドルフの母。
皇帝：ベイジル・シドニー - ルドルフの父。
ラリッシュ伯爵夫人：ジュディス・イヴリン - ルドルフの従姉で、マリーとの仲を取り持つ。
ヴェッツェラ男爵夫人：イソベル・エルソム - マリーの厳格な母。
ロシェック：イアン・ウルフ - ルドルフの忠実な召使。
モーリッツ・セップス：ジョン・マクガヴァン - ルドルフの親友で、新聞社編集長。
ステファニー皇太子妃：ナンシー・マーチャンド - ルドルフの妻。
ハンナ・ヴェッツェラ：ピッパ・スコット - マリーの姉。

エピソード

本作は、当時のテレビ制作としては大規模なもので、セット数は18とも30とも言われ、出演者は合計150人に及びました。生放送であったため、オードリー・ヘプバーンは90分の放送時間中に11回も衣装を着替えるという多忙さでした。ヘプバーンの出演料は12万5000ドル（当時の約4500万円）、全体の制作費は50万ドルから60万ドルと推定されています。これは、1分あたり当時の200万円から300万円に相当する巨額なものでした。

『プロデューサーズ・ショーケース』としては、『ピーターパン』以来の最高視聴率を記録し、大きな成功を収めました。また、原作を書いたクロード・アネは、ヘプバーンが本作の前に出演した『昼下りの情事』の原作者でもありました。ヘプバーンは1957年は仕事をしないと公言していましたが、本作が唯一の出演作となりました。

関連作品

うたかたの恋 (1936年の映画)
うたかたの恋 (1968年の映画)

外部リンク

公式ウェブサイト - ウェイバックマシンによるアーカイブ
マイヤーリング - allcinema
マイヤーリング - KINENOTE
* "Producers' Showcase" Mayerling - IMDb

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