マイヤーレモン

マイヤーレモン：歴史、特徴、栽培から改良品種まで

マイヤーレモン（学名：Citrus meyerii）は、ミカン科ミカン属に属する柑橘類です。中国原産とされ、レモンとマンダリンオレンジ（または一般的なオレンジ）の自然交配種だと考えられています。

1908年、アメリカ合衆国農務省職員フランク・ニコラス・マイヤーによって中国から導入されました。マイヤーは北京近郊でマイヤーレモンを発見したとされていますが、北京での柑橘栽培の困難さから、果実のみを入手した可能性が高いです。

中国では観賞用として鉢植えで育てられることが多い一方、アメリカではカリフォルニア料理革命期にシェフたちに再発見され、人気食材となりました。マーサ・スチュワートのレシピへの登場も人気上昇に貢献しています。

マイヤーレモンの特徴

マイヤーレモンの木は、高さ約2～3メートルまで成長しますが、剪定でサイズを調整できます。葉は深緑色で光沢があり、花は紫がかった白色で芳香を放ちます。

果実は一般的なレモンより丸みがあり、薄くて香りの良い皮が特徴です。熟すと濃い黄色からオレンジ色へと変化し、皮ごと食べることが可能です。精油はアロマセラピーや香水にも利用されます。

一般的なレモン（リスボン種、ユーレカ種）と比べて酸味が弱く、甘みがあります。果肉は濃い黄色で柔らかく、果汁が豊富で、1個あたり10～20個の種子を含みます。フラボノイド含有量はレモンとマンダリン類の中間です。

八丈島や小笠原諸島で生産される菊池レモンはマイヤーレモンの近縁種です。八丈島では樹上完熟させた「八丈フルーツレモン」として、小笠原では未熟な緑果で収穫した「島レモン」「小笠原レモン」として販売されています。

マイヤーレモンの栽培

マイヤーレモンは温暖な気候を好みます。年平均気温15度以上が適していますが、ある程度の耐寒性と耐暑性も持ち合わせています。生育が旺盛で、種子から育てた木でも4年で数千個の果実をつけることがあります。

1年を通して結実しますが、収穫のピークは冬です。水やりは十分に行う必要がありますが、冬はほとんど必要ありません。肥料は成長期に与えることで収量を増やすことができます。

病害虫への抵抗性が高く、農薬の使用量を減らせることもメリットです。サルによる食害も少ないとされています。しかし、樹勢が強いため枝が伸び続け、剪定などの手入れが欠かせません。カンキツかいよう病には弱いため、防除対策が必要です。また、果皮が薄いため台風による被害を受けやすいという弱点もあります。

コンパクトな樹形、耐寒性、高い生産性から、観賞用としても人気があります。コンテナガーデンにも適しています。かつてはアメリカ（テキサス州、フロリダ州）、南アフリカ共和国、ニュージーランドなどで大量生産されていましたが、1990年代には生産量が減少しました。

日本では生産量が少なく、戦後、高碕達之助がアメリカから持ち帰り、栽培が始まりました。兵庫県伊丹市では「たみまるレモン」として販売され、高い評価を得ています。一方、国内生産量の約9割は三重県産で、特に南牟婁郡の紀宝町や御浜町で盛んに栽培されています。三重県では、10～11月はグリーンレモン、12～1月は完熟レモンとして出荷されています。その他、千葉県松戸市、山口県岩国市由宇町、兵庫県淡路島、福井県大飯郡高浜町、長野県上伊那郡中川村などでも栽培されています。

改良型マイヤーレモン

1940年代半ばまでにカリフォルニア州で広く栽培されるようになったマイヤーレモンでしたが、カンキツトリステザウイルス（Citrus tristeza virus）の無症状宿主であることが判明し、多くの木が枯死または生産力低下に陥りました。このため、アメリカではマイヤーレモンの栽培は減少しました。

1950年代にウイルスに感染していない木が発見され、カリフォルニア大学から「改良型マイヤーレモン」として発表されました。この改良品種によって、マイヤーレモンの栽培は再び可能となりました。

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