マイライン

マイラインとは

マイラインとは、NTT東日本およびNTT西日本の固定電話回線（加入電話・INSネット）において、中継電話を利用する際に、特定の電気通信事業者を優先的に選択できるサービスです。通常、中継電話を利用する際は、電話番号の前に事業者識別番号を付加する必要がありますが、マイラインに登録することで、この番号を省略できます。

アメリカでの状況

アメリカでは、かつて巨大な独占企業であったベル電話会社（後のAT&T）が分割された際、新興の長距離通信事業者との間で不公平が生じないよう、1984年に事業者事前登録制度が導入されました。これにより、消費者は事前に登録した事業者を優先的に利用できるようになりました。

他国での状況

同様の優先接続制度は、世界各国で導入されています。

オーストラリア：1993年
カナダ：1994年
ドイツ：1998年
フランス：2000年

日本での状況

マイライン導入の背景

1980年代、新電電の参入により市外通話料金の値下げ競争が激化しました。旧NTTは、LCR（Least Cost Routing）の普及によりシェアを大きく落としました。1999年のNTT東西・NTTコミュニケーションズへの固定通信事業分社化後も、NTTグループの識別番号を付加せずにNTT網に接続されることが、消費者にとって事業者選択の妨げとなっていました。

制度導入の経緯

このような状況を改善するため、1998年に郵政省が「優先接続に関する研究会」を設置し、優先接続制度の導入を検討しました。その結果、2000年3月には、東西NTTが運営主体となり、2001年5月から優先接続サービスを開始することが決定しました。

マイラインの営業

サービス開始当初は、各通信事業者が顧客獲得のために積極的な営業活動を展開しました。しかし、マイラインプラスの登録を巡るトラブルや、登録変更手数料の導入など、課題も多くありました。

マイライン登録数の減少

マイラインの登録数は、2003年度の1億7303万件から2016年度の6698万件へと大幅に減少しました。これは、直収電話やIP電話などの普及により、マイラインの必要性が薄れたためと考えられます。また、携帯電話やスマートフォンの普及も、固定電話の利用減少に拍車をかけました。

IP網移行後のマイラインの扱い

固定電話サービスのIP網移行に伴い、2024年1月にマイラインは廃止されることになりました。移行にあたり、各通信事業者は契約者に対して自社サービスへの移行を働きかけ、最終的に移行手続きを行わなかった契約者については、NTT東西がみなし契約で移行する措置が取られました。

日本での利用方法

マイラインは、通話区分（市内、県内市外、県外、国際）ごとに、利用する通信事業者を事前に登録するサービスです。登録後は、通常のダイヤル操作で登録した事業者の回線が利用できます。マイラインには、登録した事業者を優先する「マイライン」と、特定の事業者に固定する「マイラインプラス」の2種類があります。マイラインプラスでも、解除特番を付加することで他の事業者を利用できます。

通話区分

通話区分は、以下の4つに分かれています。

市内
同一都道府県内の市外（県内市外）
他都道府県（県外）
国際

ただし、市町村および都道府県の区分は、NTT東日本・西日本が定める料金区域（MA）に基づいているため、行政上の区分とは一部異なる場合があります。

対象外となる通話

110番などの特殊番号への通話や、携帯電話への通話、公衆電話からの通話は、マイラインの対象外です。特殊番号への通話は、常にNTTグループが利用されます。

携帯電話への通話については、一部の固定電話キャリアが中継サービスを提供しており、事業者識別番号を付加することで利用できます。しかし、マイラインの登録対象ではないため、通常はマイラインの割引は適用されません。

LCRとの関係

LCR（Least Cost Routing）が機能している場合、マイラインよりもLCRで選択された通信事業者が優先されます。マイラインプラスの場合はLCRの影響を受けませんが、登録事業者とLCRの選択事業者が異なる場合、通話開始時に音声ガイダンスが流れます。

マイライン参加企業と事業者識別番号

マイラインサービスに参加していた企業と、その事業者識別番号は以下の通りです（サービス終了時点）。

NTTコミュニケーションズ：0033
KDDI：001
ソフトバンク：0061
楽天コミュニケーションズ：0036
日本テレコム：0088
フュージョン・コミュニケーションズ：0039

まとめ

マイラインは、固定電話の通話料金を少しでも安くするためのサービスとして、多くの人に利用されました。しかし、通信環境の変化や技術の進歩により、その役割を終えることとなりました。マイラインの歴史は、日本の通信業界の変遷を象徴するものと言えるでしょう。

脚注

本記事は、サービス終了時点の情報を基に作成しています。
料金やサービス内容については、各事業者にご確認ください。

関連項目

Least Cost Routing（LCR）

外部リンク

マイライン事業者協議会

もう一度検索