直収電話

直収電話とは

直収電話とは、NTT東日本・NTT西日本以外の電話会社が提供する、0AB～J番号（一般の市外局番）を使用する固定電話サービスです。回線交換方式でありながら、ケーブルテレビやIP電話とは異なる分類に属します。

概要

直収電話は、ブロードバンド回線とのセット販売ではなく、電話のみの加入が可能です。主に企業向けに、ISDNやアナログ回線インターフェースで提供されます。光ファイバー回線を利用したサービスもあり、大企業向けにはISDNの1次群速度インターフェース、中小企業や個人向けには基本速度インターフェースやアナログ回線インターフェースが提供されています。

広義には、IP電話の一種であるケーブルプラス電話や、他社のデジタル専用線を使用するひかりラインも含まれます。

現状

2019年3月末時点で、直収電話の契約数は162万件、通常の市外局番IP電話の利用数は3441万件となっています。2001年3月から、NTTの固定電話番号を他社へ移行する片方向番号ポータビリティが可能になりましたが、一部移行できない番号も存在します。

各事業者は、他の電気通信サービスと組み合わせて料金体系を複雑化させ、法人向けには相対取引による販売を推進しています。料金算出方法は事業者ごとに異なり、料金の比較が難しいのが現状です。

類似サービスとの比較

現在、一般企業や個人向けには、FTTHのIP加入者線を利用したブロードバンドインターネット接続と、通常の市外局番を使用するIP電話（NTT東西の「ひかり電話」など）の組み合わせが主流です。直収電話は、停電時にも通話が可能な企業向けとして利用されています。

マイラインはNTT東西の固定電話回線からの発信時の中継電話会社優先選択サービスですが、直収電話契約時は無効となります。また、NTTの契約を条件とする無料付加サービスや割引サービスは、直収電話へ変更すると有料になる場合があります。

国際電話を多用する場合、直収電話では00XY番号への接続が制限され、直収電話事業者の国際サービスしか利用できないことがあります。

提供電気通信事業者

以下は、2021年12月時点での主な事業者です。

新規加入可能なサービス

KDDI: ケーブルプラス電話（ケーブルテレビ回線利用のIP電話）、KDDI光ダイレクト（光ファイバー回線利用のIP電話）
J:COM: J:COM PHONEプラス（J:COM CATVサービス地域でIP電話のみ加入可能）
ソフトバンク: おとくライン

過去に営業していた主なサービス

NTTコミュニケーションズ: ひかりライン（ISDN1次群速度インターフェースで接続、2018年3月末に新規受付終了、2020年3月末にサービス終了）
KDDI: メタルプラス電話（アナログ、BRIのみ、2013年6月17日に受付終了、2016年6月30日にサービス終了）
平成電電: CHOKKA（2006年6月に破産、事業は日本テレコムへ譲渡、2006年10月31日にサービス終了し「おとくライン」へ統合）
パワードコム: 東京電話ビジネスダイレクト（2004年にフュージョンコミュニケーションズへ移管、2006年にKDDIのダイレクトラインに統合）

切り替えた場合の利点と不利益

以下は、「おとくライン」と「ケーブルプラス電話」を中心に、過去に提供されていたサービスについても一部記載します。

詳細仕様は事業者により異なるため、利用者自身の状況や判断で左右される場合があります。また、料金算出方法は各事業者で同一ではなく、広告内容と異なる場合があります。

利点

NTT東西の固定電話回線よりも、基本料金が安価
NTT東西と同種の付加サービスが安価
新規回線加入時の施設設置負担金が不要
NTT東西や中継電話よりも通話料が安くなることが多い
KDDIとソフトバンクは、電話、プロバイダ、携帯電話を同一グループで統一すると割引が拡大
音声通話定額制オプションを提供

ソフトバンク「おとくライン」（事務所用）：ボイスネットライト
KDDI「メタルプラス」（サービス終了）：事業所間定額かけ放題
平成電電「CHOKKA」（サービス終了）：かけ放題

不利益

初期費用やランニングコストの安さと引き換えに、NTT回線で利用できるサービスが利用できなくなる場合がある（事業者により異なる）
サービス提供地域が主要都市部に限定される場合が多い
家庭用と事業所用の判定区分が厳しく、支払い名義が個人でも請求先が自宅以外だと事業所用になる場合がある
特殊な電話番号（事業者識別番号、プロバイダアクセスポイント、ペイパービューサービスなど）への接続が制限される
権利の相続、遺贈、譲渡ができない場合がある
付加機能が利用できない、または仕様が異なる
NTTからの屋内配線や電話機のレンタルが利用できない
特殊なFAX・モデムサービスが利用できない
フリーダイヤル類の着信は直収電話事業者のものに限定される場合が多い
他の系列事業者の国際電話サービスや一部の国際電話会社が利用できない
ADSL回線サービスは直収電話事業者のものに限定される
NTT仕様の電話機の機能が正しく動作しない場合がある
PHSからの発呼にアクセスチャージが加算される場合がある
メンテナンスで電話サービスが停止することがある
回線故障時の対応がNTT東西と同等でない場合がある
ドライカッパを利用する場合、メタル線の保守はNTT東西が担当するが、電話交換機や幹線網は直収電話事業者が保守する
電話帳の配布が有料になる、または未対応の場合がある
回線番号は無料で掲載されることが多いが、申し込みが必要な場合もある

番号ごとの接続可否一覧

	接続可否
-	-

無線呼び出し	×

事業者識別番号	×

0570番号	▲

ペイパービュー	×

付加（オプション）サービス一覧

各社により提供サービスが異なるため、詳細については各社のウェブサイトをご確認ください。

仕組み

直収電話の仕組みは、加入者線路にNTT東西のドライカッパやダークファイバを使用する場合、電話交換機はNTT局舎に設置されますが、光ファイバや同軸ケーブルを使用する場合は、自社局舎に直接収容されることが多いです。

交換・局間網は各社独自の設備を用い、NTT東西とは異なる技術や仕様が使われる場合があります。以下に、代表的な回線構成を示します。

平成電電「CHOKKA」、ソフトバンク「おとくライン」

光RTを使用。

一般電話機一般加入者線（ドライカッパ） RT（収容局設置）光幹線網中央電話交換機 -- 公衆網

KDDI「メタルプラス」

IP電話交換機を使用。

一般電話機一般加入者線（ドライカッパ） VoIP 交換機（収容局設置） VoIP幹線網ゲートウェイ交換機 -- 公衆網

J:COM「J:COM PHONE」

双方向ケーブルテレビでサービス。

一般電話機加入者変換器同軸ケーブル・光幹線網 CATV局（ヘッドエンド） CATV局交換機 -- 公衆網

J:COM PHONE プラス、ケーブルプラス電話

IP電話サービス。

一般電話機電話機能付きケーブルモデム同軸ケーブル・光幹線網 CATV局（ヘッドエンド）ルーター VoIPゲートウェイ公衆網

歴史

直収電話のルーツは、旧国鉄の「鉄道電話」や電力会社の「電力保安通信線」などの大規模な内線電話網にあります。1985年の電電公社民営化と通信自由化により、NTTグループ以外の事業者も一般向け電話サービスに参入できるようになりました。

当初、NTTの交換機は他社が提供する0AB～J番号への着信に対応していなかったため、NTT網への発信はできても、NTT網からの着信はできませんでした。1997年にNTTの交換機が対応し、本格的に販売が開始されました。

1999年のドライカッパ・ダークファイバの開放、2001年の番号ポータビリティ制度開始、固定電話の通話減少による接続料金の値上げなどにより、各社が中継電話の代替として中小企業や一般家庭向けに参入しました。

2003年に平成電電が「CHOKKA」、2004～2005年に日本テレコムが「おとくライン」、KDDIが「メタルプラス」をサービス開始しました。

競争激化により、NTT東西も基本料金や通話料の値下げ、施設設置負担金の段階的廃止などを実施しました。

2004年、平成電電は日本テレコムに対し買収を提案しましたが、実現せず、技術情報の不正使用で「おとくライン」のサービス差し止めを求めて提訴しましたが敗訴しました。

2005年、「メタルプラス」が浜松市で119番通報ができない問題が発生し、行政指導を受けました。

2005年、平成電電が民事再生法を申請し、2006年に破産。サービスは日本テレコムに譲渡され、CHOKKAはサービス終了しました。メタルプラスも2013年受付終了、2016年にサービスを終了しました。