新電電

新電電（しんでんでん）とは、1985年の日本の通信自由化を契機に、それまで国営企業であった日本電信電話公社（電電公社、後のNTT）が独占していた電気通信事業に、新たに参入した事業者の総称です。この自由化によって、通信市場に競争原理が導入され、多様なサービスが提供されるようになりました。

新電電という言葉は、主に自由化の初期に参入し、国内および国際中継電話サービスを手がけた以下の5社を指すことが一般的です。

国内系
第二電電（DDI）（現在のKDDI）
日本テレコム（後のソフトバンクテレコム、現在のソフトバンク）
日本高速通信（後のKDD、現在のKDDI）
国際系
日本国際通信（ITJ）（日本テレコムと合併し、ソフトバンクテレコムを経て現在のソフトバンク）
* 国際デジタル通信（IDC）（ケーブル・アンド・ワイヤレスIDC、日本テレコムIDC、日本テレコムを経てソフトバンクテレコム、現在のソフトバンク）

これらの5社に加えて、同時期に設立された電力系通信事業者各社も新電電に含めることがあります。電力会社が自社の通信網を活用して通信事業に参入したもので、これも通信市場の競争を促す一因となりました。

さらに、1998年に第一種電気通信事業者の免許を取得したワールドコム・ジャパン（現在のベライゾンジャパン）を皮切りに、外資系の電気通信事業者や、ジュピターテレコム（JCOM）などのケーブルテレビ事業者、USENなども新電電として扱われることがあります。これは、NTT系以外の固定系電気通信事業者を広く指す場合に用いられます。

一方で、携帯電話・PHS事業者は新電電に含まれないことが多いです。具体的には、日本移動通信（後のKDDI）、東京デジタルホン（後のJ-PHONE、ボーダフォン日本法人、ソフトバンクモバイルを経て現在のソフトバンク）、DDIポケット（ウィルコム、ワイモバイルを経て現在のソフトバンク）などが該当します。これらの事業者は、固定電話とは異なるモバイル通信の分野でサービスを提供しており、新電電とは区別されます。

新電電は、英語ではNCC（New Common Carrier）とも呼ばれますが、この呼称は実際にはあまり使われていません。特に英語圏では、通信事業の自由化が早くから進んでいたため、自由化後に参入した事業者を特に区別する必要がなく、「New Common Carrier」という言葉はほとんど通用しません。また、自動的に最も安い電話会社を選択する装置である「NCC-BOX」（後のLCR）の名称に使われた程度で、一般的な言葉としては定着しませんでした。この点からも、新電電という概念が日本独自の通信市場の歴史を反映したものであることがわかります。

このように、新電電は、日本の通信自由化という特殊な背景の中で生まれた概念であり、その範囲は時代や文脈によって変化します。しかし、NTT以外の電気通信事業者、特に固定系通信事業者を指す言葉として、今でも一定の認知度を持っています。この用語は、日本の通信市場における競争の歴史と、多様な通信サービスが提供されるようになった背景を理解する上で重要なキーワードの一つと言えるでしょう。

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