マインドフィールズ

TOTO『マインドフィールズ』解説

1999年に発表されたTOTOの通算10作目にあたるスタジオ・アルバムが、『マインドフィールズ』です。この作品は、バンドの歴史において非常に重要な意味を持つ一枚として、そのディスコグラフィーに刻まれています。本作の最大のポイントは、かつてバンドのボーカルとして活躍した初代メンバー、ボビー・キンボールが復帰したことです。

ボビー・キンボールは、1984年のアルバム『アイソレーション』の制作途中でバンドを脱退していましたが、『マインドフィールズ』において、実に15年ぶりにTOTOの正式な一員としてカムバックを果たしました。彼の力強く個性的な歌声は、初期TOTOサウンドの要であり、その復帰は世界中のファンにとって大きな喜びとなりました。スティーヴ・ルカサー（ギター、ボーカル）、デヴィッド・ペイチ（キーボード、ボーカル）、マイク・ポーカロ（ベース）、サイモン・フィリップス（ドラム、パーカッション）という当時のメンバーに、キンボールが再びフロントマンとして加わることで、バンドは新たな活力を得てこのアルバムを完成させました。

本作の制作には、レギュラーメンバーの他、多くの著名なミュージシャンがゲストとして参加し、アルバムのサウンドに多彩な要素を加えています。特に挙げられるのは、元オジー・オズボーン・バンドのベーシストとしても知られるフィル・スーザンの参加です。彼は、「アフター・ユーヴ・ゴーン」という楽曲において、ソングライティングに携わると同時に、バッキング・ボーカルも担当しています。

また、かつてTOTOでボーカルを務めたジョセフ・ウィリアムズも、本作に間接的ながら関与しています。彼は、中心メンバーであるデヴィッド・ペイチとの共作により、「マッド・アバウト・ユー」という楽曲を提供しました。このように、バンドの過去を彩った人物が現在の作品に関わることは、TOTOの長い歴史とその繋がりを感じさせます。

アルバムのサウンドを支えるのは、メンバーそれぞれの卓越した演奏です。ルカサーのギター、ペイチのキーボード、マイク・ポーカロのベース、フィリップスのドラムが一体となり、TOTOらしい高度なアンサンブルを聴かせます。ゲストミュージシャンとして、パーカッションのレニー・カストロやキーボードのスティーヴ・ポーカロといったTOTOファミリーの面々も参加し、サウンドを厚くしています。

本作の特徴の一つとして、充実したホーン・セクションとバッキング・ボーカル陣が挙げられます。ホーンにはトム・スコットやチャック・フィンドレーといった一流プレイヤーが参加し、楽曲に奥行きを与えています。バッキング・ボーカルも豪華で、ティモシー・B・シュミット、リチャード・ペイジ、クリス・トンプソンといった実力派シンガーたちがコーラスを加えています。

『マインドフィールズ』には、全13曲が収められています。中には9分を超える大作「ハイ・プライス・オブ・ヘイト」や、複数パートに分かれた「ベター・ワールド (Parts I, II & III)」といった聴き応えのある楽曲も含まれており、バンドの表現力の幅広さを示しています。これらの楽曲は、主にルカサーとペイチが中心となって作曲されていますが、他のメンバーや外部のソングライターとの共作も多く見られます。

そして、日本盤とアメリカ盤には、ボーナス・トラックとして「スパニッシュ・ステップス・オブ・ローマ」が追加収録されています。このボーナス曲もアルバムの雰囲気に良く合っており、ファンにとっては聴き逃せない一曲です。

総括すると、『マインドフィールズ』は、ボビー・キンボールの復帰という大きな話題を背負いつつも、バンド本来の高い演奏能力と、ゲストミュージシャンたちの貢献が見事に融合した作品です。TOTOの活動における重要な節目であり、彼らのキャリア後期を代表する一枚と言えるでしょう。

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