マインド・ボム

『マインド・ボム』は、イギリスのロックバンド、ザ・ザが1989年にリリースした3枚目のスタジオアルバムです。このアルバムは、これまでマット・ジョンソンのソロプロジェクトとしての側面が強かったザ・ザが、バンドとしての形態を前面に出して制作された点が大きな特徴です。

制作にあたっては、元ザ・スミスのジョニー・マー、ジェームズ・エラー、デヴィッド・パーマーといったメンバーが正式に加入しました。特にジョニー・マーの参加は、音楽ファンにとって大きな話題となりました。ジョンソンとマーは、マーがザ・スミスを結成した頃からの知り合いでしたが、一時的に連絡が途絶えていました。しかし、本作の制作中にイギー・ポップのライブ会場で再会し、ジョンソンがマーにバンドへの参加を打診したというエピソードがあります。

アルバム収録曲の中でも特に注目されたのが、「アルマゲドン・デイズ」です。この曲は、イスラム教とキリスト教の対立による最終戦争を描いたもので、当初は先行シングル候補として予定されていました。しかし、当時の社会情勢、特にサルマン・ラシュディの小説『悪魔の詩』を巡るイスラム社会の反発が強まっていた時期と重なり、イランの最高指導者ルーホッラー・ホメイニーがラシュディの死刑を宣告するという事態が発生しました。そのため、レコードレーベルの判断で、急遽「ビートゥン・ジェネレーション」が先行シングルとしてリリースされることになりました。その後、「アルマゲドン・デイズ」は、アルバムからの3枚目のシングルとしてリリースされました。

『マインド・ボム』は、全英アルバムチャートで9週にわたってトップ100入りし、最高4位を記録しました。ザ・ザにとって初の全英トップ10アルバムとなり、商業的にも大きな成功を収めました。ニュージーランドでは、アルバムチャートで初登場5位を記録し、翌週には最高3位にランクイン。12週連続でトップ50入り（うち8週はトップ10入り）を果たすなど、国際的にも高い評価を得ました。

音楽評論家のスティーヴン・トーマス・アールワインは、オールミュージックで本作を5点満点中4.5点と高評価し、「厳粛な内容でありながら、ダンスミュージックの影響を受けたロックとしては最上位」と評しました。アルバム全体を通して、シリアスなテーマと実験的なサウンドが融合しており、ザ・ザの音楽性の幅広さを感じさせる作品となっています。

収録曲は以下の通りです。

1. グッド・モーニング・ビューティフル
2. アルマゲドン・デイズ
3. バイオレンス・オブ・トゥルース
4. キングダム・オブ・レイン
5. ビートゥン・ジェネレーション
6. オーガスト&セプテンバー
7. グラヴィテイト・トゥ・ミー
8. ビヨンド・ラヴ

これらの楽曲は、マット・ジョンソンが主に作詞作曲を手掛けていますが、「グラヴィテイト・トゥ・ミー」はジョニー・マーとの共作となっています。

参加ミュージシャンには、ザ・ザのメンバーであるマット・ジョンソン（ボーカル、ピアノ、キーボード、メロディカ、アコースティックギター、ディストーションギター、テープ操作）、ジョニー・マー（ギター、ハーモニカ）、ジェームズ・エラー（ベース）、デヴィッド・パーマー（ドラムス）に加え、シネイド・オコナー（ボーカル）、ウォーン・リヴゼイ（キーボード、バンジョー、ストリングス&クワイアアレンジ、アコースティックギター、バッキングボーカル）など、多数のゲストミュージシャンが参加しています。多岐にわたる楽器が使用されており、アルバムのサウンドに深みを与えています。

『マインド・ボム』は、ザ・ザのキャリアにおいて重要な作品であると同時に、1980年代後半のロックシーンを代表する傑作として、今もなお多くの音楽ファンに愛され続けています。

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