マジェルテーン

マジェルテーン氏族：ソマリアの主要氏族

マジェルテーン（Majeerteen）は、ソマリアを代表する氏族の一つで、ダロッド氏族の主要な支族です。主にソマリア北東部のバリ州、ヌガール州、ムドゥグ州に居住し、ソマリアの政治・経済に大きな影響力を持っています。連邦制国家であるソマリアにおいて、プントランドを主体的に建国した氏族としても知られています。

歴史

マジェルテーン・スルタン国

17世紀初頭に氏族集団として形成され、18世紀半ばにはスルタン国を築き上げました。19世紀には、オスマン・マハムド王の時代に最盛期を迎え、カルカール州やヌガールなどを支配下に置き、交易網の強化や外国との条約締結を通じて中央集権体制を確立しました。

しかし、オスマン・マハムド王のいとこであるユスフ・アリ・ケナディドとの間で勢力争いが勃発。ケナディドは一時イエメンへ追放されるも、後にホビョを制圧し、ホビョ・スルタン国を建国。マジェルテーン・スルタン国とホビョ・スルタン国が並立する時代がしばらく続きました。

1880年代後半には、両スルタン国はイタリアの保護領となり、20世紀初頭には、イスラーム聖職者サイイド・ムハンマド・アブドゥラー・ハッサンの反乱が発生。イタリアはケナディドに協力を要請するも拒否され、ケナディドは追放。その後、イタリアはソマリアの大部分をイタリア領ソマリランドとして支配しました。

ソマリア独立後

1960年のソマリア独立後、マジェルテーン氏族は初代首相シェルマルケや2代目首相アブディリザクを輩出するなど、政治の中枢を担いました。しかし、その後のクーデターにより、モハメド・シアド・バーレ政権が成立。バーレは自身の出身氏族を優遇し、マジェルテーン氏族は冷遇されることとなります。1978年にはマジェルテーン氏族によるクーデター未遂事件が発生し、多くの氏族関係者が処刑されました。

その後、アブドゥラヒ・ユスフを中心とするソマリ救済民主戦線 (SSDF) が結成され、内戦時代にはプントランドの建国を主導しました。

プントランド

1998年、マジェルテーン氏族を中心とするハルティは、ソマリア北東部でプントランドの建国を宣言。初代大統領から現在に至るまで、マジェルテーン氏族出身者が大統領を務めています。

居住地

伝統的に、現在のバリ州、ヌガール州、ムドゥグ州に相当する地域に居住しています。具体的には、北はバンダル・シヤダからガラカドにかけての海岸沿い、内陸部の都市であるガローウェやガルカイヨなどに多く居住しています。

19世紀には、同じダロッド氏族のドゥルバハンテ、ダシーシュ、ワルセンゲリなどと共に、ソマリア南部のキスマヨにも移住しました。その他、エチオピアソマリ州のオガデン付近にも居住者が存在します。

氏族の系統

マジェルテーン氏族は、アリ・サレバーン、マハムード・サレバーン、ウガール・サレバーンなどの支族に分かれています。プントランドでは、マハムード・サレバーン支族の下部組織であるオマル・マハムード、オスマン・マハムード、イセ・マハムードの3支族が大きな権力を握っており、歴代の大統領を輩出しています。

著名人

アブディラシッド・アリー・シェルマルケ：ソマリア初代首相、2代目大統領
アブディリザク・ハジ・フセイン：ソマリア元首相
アブドゥラヒ・ユスフ：ソマリア元大統領、プントランド元大統領
アブドゥルカウィ・アハメド・ユスフ：国際弁護士

参考文献

Conflict in Somalia: Drivers and Dynamics (世界銀行, 2005)
Somalia Assessment 2001 (イギリス内務省, 2001)

外部リンク

* The Majeerteen Sultanates

もう一度検索