マジカル・ミステリー・ツアー (曲)

マジカル・ミステリー・ツアー (Magical Mystery Tour)

ビートルズの楽曲「マジカル・ミステリー・ツアー」は、1967年12月にBBC Oneで放送された同名のテレビ映画のオープニングテーマとして発表されました。同名のEP盤とキャピトル編集盤の表題曲としても知られています。クレジットはレノン＝マッカートニー名義となっていますが、主にポール・マッカートニーによって作曲されました。

楽曲の背景と構成

この楽曲は、アルバム『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』のレコーディング・セッション終了直後の1967年4月から5月にかけてレコーディングされました。聴衆を不思議なミステリー・ツアーへ誘う歌詞が特徴的で、楽曲中には4本のトランペットによるファンファーレが華やかに響きます。

マッカートニーは、この曲についてジョン・レノンとの共作であると語っていますが、レノン自身は「基本的にポールのアイデア」と述べています。歌詞は映画を前提としており、マッカートニーがアメリカ旅行中に「ビートルズが観光バスに乗って予測不能な冒険をする」というショートフィルムのアイデアを思いついたことがきっかけで制作されました。当時、ビートルズはLSDを服用していたこともあり、歌詞は薬物への言及と解釈されることもあります。

作詞にあたり、マッカートニーはアシスタントのマル・エヴァンズに、歌詞になりそうな言葉が書かれたポスターをバス停から探してくるように依頼しました。最終的には理想的なポスターは見つからず、スタジオでのブレインストーミングを経て歌詞が完成しました。

レコーディングの詳細

レコーディングは1967年4月25日にEMIレコーディング・スタジオのスタジオ3で開始されました。初日は曲が未完成だったため、リハーサルに多くの時間が費やされました。ベーシック・トラックは、マッカートニーのピアノ、レノンのアコースティック・ギター、ジョージ・ハリスンのリードギター、リンゴ・スターのドラムという編成で3回録音されました。ハリスンのギターとコーダのピアノにはフランジャーが使用されています。

翌日にはマッカートニーのベースがオーバーダビングされ、マラカス、タンバリン、カウベルなどのパーカッションが加えられました。レノン、マッカートニー、ハリスンによる反響する叫び声や、「Roll up―Roll up for the Mystery Tour」というフレーズのバッキング・ボーカルも録音されました。バッキング・ボーカルは、テープの回転速度を遅くしてレコーディングされたため、再生時に声が高く聞こえるように工夫されています。

5月3日には、4人のトランペット奏者によるブラス・セクションが追加され、コーダにはグロッケンシュピールもオーバーダビングされました。

音楽評論家のイアン・マクドナルドは、レコーディングの遅延について、ビートルズのLSDの使用と、レノンとハリスンがマッカートニーの映画企画に無関心だったことが原因であると指摘しています。マネージャーのブライアン・エプスタインの死後、メンバーは9月初旬に映画撮影を行うことを決定し、サウンドトラックのレコーディング・セッションは11月7日に、マッカートニーが客引きの台詞とバスの走行音を追加して完了しました。バスの走行音はM1モーターウェイの高架橋で録音されたもので、ステレオ・ミックスとしてそのまま使用されました。

リリースと評価

「マジカル・ミステリー・ツアー」は、1967年12月8日にイギリスで6曲入りの2枚組EP盤として発売されました。アメリカではEPの形態が一般的ではなかったため、シングル5曲を追加したLP盤として発売されました。LP盤はEP盤に先行して11月27日に発売されています。

12月26日には、BBC Oneでテレビ映画『マジカル・ミステリー・ツアー』が放送され、本作はオープニングテーマとして使用されました。映画の評判は芳しくありませんでしたが、サウンドトラック盤は肯定的な評価を得ました。イギリスで発売された2枚組EP盤は、全英シングルチャートで最高位2位を獲得しています。

本作は、1973年のコンピレーション・アルバム『ザ・ビートルズ1967年〜1970年』や、1982年の『リール・ミュージック』にも収録されています。

音楽評論家からの評価は賛否両論ありましたが、現在ではビートルズの代表的な楽曲の一つとして広く認知されています。

クレジット

ポール・マッカートニー - リード・ボーカル、バッキング・ボーカル、ピアノ、ベース、掛け声、パーカッション
ジョン・レノン - リード・ボーカル、バッキング・ボーカル、アコースティック・ギター、パーカッション
ジョージ・ハリスン - ハーモニー・ボーカル、リードギター、パーカッション
リンゴ・スター - ドラム、パーカッション
マル・エヴァンズ、ニール・アスピノール - パーカッション
デイビッド・メイソン、エルガー・ハワース、ロイ・コープステイク、ジョン・ウィルブラハム - トランペット

カバー・バージョン

アンブロージア、チープ・トリック、BONNIE PINK|BONNIE_PINK、イングヴェイ・マルムスティーン、エディ・ヴェダーなど、多くのアーティストによってカバーされています。

もう一度検索