マジャパヒト王国

マジャパヒト王国：ジャワを統べた海洋帝国の興亡

マジャパヒト王国は、13世紀末から15世紀にかけてジャワ島中東部を中心に栄えた、インドネシア最後のヒンドゥー教王国です。その最盛期には、インドネシア諸島全域、さらにはマレー半島にまで勢力を拡大したとも言われていますが、実際にはジャワ島中東部を主な支配領域としていたとする説もあります。本稿では、このマジャパヒト王国の成立から最盛期、そして衰退に至るまでの歴史を詳細に解説します。

マジャパヒト王国の成立

1293年、マジャパヒト王国は、シンガサリ王国の混乱に乗じて成立しました。モンゴル帝国の使節が朝貢を求めた際、時の王クルタナガラがこれを拒否し、使者を辱めたことが遠因となり、モンゴル軍のジャワ遠征が起こります。しかし、クルタナガラ王は既に反乱によって命を落としており、後を継いだウィジャヤが、モンゴル軍と同盟して反乱軍を討ち、シンガサリ王国を滅ぼしました。

その後、ウィジャヤはモンゴル軍をジャワから追い払い、アルヤ・ウィララジャと協力してマジャパヒト王国を建国し、自らクルタラジャサ＝ジャヤワルダナと名乗りました。都はジャワ島東部プランタス川流域のマジャパヒトに置かれました。当初はモンゴルとの関係が悪化しましたが、クビライの死後、関係は好転し、朝貢が行われるようになりました。しかし、建国間もない1295年、ウィジャヤは国土を二分割し、東部はアルヤ・ウィララジャが治めることとなりました。しかし、1316年にはウィジャヤの子ジャヤナガラによって再び統一されました。

マジャパヒト王国の最盛期

ジャヤナガラの死後、王位はクルタナガラ王の末娘ラジャパトニに継承されましたが、彼女は出家していたため、娘のトリブワナが摂政として政治を執り行いました。この時期に、ガジャ・マダが宰相に抜擢され、マジャパヒト王国は最盛期を迎えます。ガジャ・マダは、1342年のバリ島侵攻を皮切りに、スマトラ島のシュリーヴィジャヤ王国を滅ぼし、南海の海上交易ルートを掌握しました。最盛期には、マレー半島やカリマンタン島にまで勢力を拡大し、東西交通の要衝であるマラッカ海峡とスンダ海峡を制圧しました。また、タイのアユタヤ王朝やカンボジア、ベトナムとも友好関係を築きました。

マジャパヒト王国の衰退

1376年には新たな王国が誕生し、マジャパヒト王国は東西に分裂したとされています。1377年には、ガジャ・マダが亡くなった後も、パレンバンに兵を送りシュリーヴィジャヤ王国を滅亡させましたが、この時、王子パラメスワラが逃れてマラッカ王国を建国しました。1389年にハヤム・ウルクが亡くなると、後継者争いが起こり、1404年から1406年にかけて、東西に分かれての内戦が勃発しました。15世紀には、イスラム教が浸透し、マラッカ王国がイスラム化したのを始め、ジャワ各地にイスラム教国が成立し始めます。マジャパヒト王国でもイスラム教への改宗が容認され、その影響力が徐々に増していきました。

1478年、ブラウィジャヤ5世の息子ラデン・パタハがドゥマク王国を建国し、マジャパヒト王国に宗主権を認めさせたことで、マジャパヒト王国は事実上滅亡しました。マジャパヒト王国は、13世紀から16世紀にかけてインドネシアを中心に栄え、琉球王国とも交易を行っていました。

マジャパヒト王国の遺跡と復元

ジャワ島東部には、マジャパヒト王国の遺跡が残されていますが、発掘調査は資金や人材不足で遅れています。しかし、遺跡発掘への支援を呼びかけるため、インドネシア政府と日本の民間団体が協力し、当時の技術で木造船を復元しました。この船は釘を使わずに作られた帆船で、2010年にはアジア各国に向けて出航しました。

まとめ

マジャパヒト王国は、ジャワ島を中心に栄え、東南アジアの歴史において重要な役割を果たした王国です。ヒンドゥー教を基盤としながらも、イスラム教の影響も受け、複雑な文化が形成されました。その盛衰は、政治、経済、文化、そして宗教など、多様な側面から考察されるべきであり、その歴史的意義は今日でも深く探求されています。

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