マスター・オブ・リアリティ

ブラック・サバス『マスター・オブ・リアリティ』

『マスター・オブ・リアリティ』は、1971年にブラック・サバスが発表した3枚目のアルバムであり、ヘヴィメタルというジャンルを確立した重要な作品として知られています。このアルバムは、その革新的なサウンドと、従来のロックとは一線を画すテーマ性で、音楽史に大きな足跡を残しました。

革新的なサウンド

ギタリストのトニー・アイオミは、本作からギターのチューニングを1音半下げるという試みを始めました。これは、指の怪我を抱えるアイオミが、弦のテンションを下げて演奏しやすくするための工夫でしたが、結果的に、より低く、重く、そしてドゥームなサウンドを生み出すことになりました。このサウンドは、後のヘヴィメタルバンドに多大な影響を与え、ブラック・サバスのトレードマークの一つとなりました。

深遠な歌詞世界

歌詞のテーマは、ドラッグ、孤独、戦争、そして神といった、当時のロック音楽としては異例なほどダークでシリアスなものが扱われています。「アフター・フォーエヴァー」では、アイオミ自身が作詞を手掛け、キリスト教的なテーマを掘り下げています。これらの歌詞は、聴く者に深い問いを投げかけ、単なるエンターテイメントを超えた、精神的な探求を促すものでした。

アメリカ盤のユニークな仕様

オリジナルのアメリカ盤では、いくつかの曲にサブタイトルが付けられ、収録曲数が多く見えるように工夫されていました。例えば、「チルドレン・オブ・ザ・グレイヴ」のコーダ部分は「The Haunting」、「ロード・オブ・ジス・ワールド」のイントロ部分は「Step Up」、「イントゥ・ザ・ヴォイド」のイントロ部分は「Deathmask」というタイトルがそれぞれ付けられています。また、アルバムタイトル自体も「マスターズ・オブ・リアリティ」と誤って印刷されていました。このような仕様は、コレクターズアイテムとしての価値を高めています。

商業的成功と評価

アルバムは、イギリスのチャートで5位、アメリカのビルボードポップアルバムチャートで8位を記録するなど、商業的にも成功を収めました。また、『ローリング・ストーン誌が選ぶオールタイム・グレイテスト・アルバム500』では234位にランクインするなど、批評家からの評価も高く、時代を超えて愛される名盤としての地位を確立しています。

ロジャー・ベインの降板とリユニオン・ツアー

デビュー以来、ブラック・サバスのプロデューサーを務めてきたロジャー・ベインは、本作を最後に降板しました。しかし、アルバムに収録された楽曲の多くは、後の「リユニオン・ツアー」で演奏され、往年のファンを熱狂させました。

収録曲

1. スウィート・リーフ - "Sweet Leaf"
2. アフター・フォーエヴァー -"After Forever"
3. エンブリオ - "Embryo"
4. チルドレン・オブ・ザ・グレイヴ - "Children of the Grave"
5. オーキッド - "Orchid"
6. ロード・オブ・ジス・ワールド - "Lord of This World"
7. ソリテュード - "Solitude"
8. イントゥ・ザ・ヴォイド - "Into the Void"

参加ミュージシャン

オジー・オズボーン - リードボーカル
トニー・アイオミ - ギター、フルート、ピアノ
ギーザー・バトラー - ベース
ビル・ワード - ドラム、バックボーカル

まとめ

『マスター・オブ・リアリティ』は、ブラック・サバスの音楽性を語る上で欠かせない作品であり、ヘヴィメタルの歴史を大きく変えた一枚です。その重厚なサウンド、深遠な歌詞、そして革新的な試みは、今もなお多くのミュージシャンや音楽ファンに影響を与え続けています。

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