マット・ギタウ

マット・ギタウ（Matt Giteau, 1982年9月29日生）は、オーストラリアを代表する元ラグビーユニオン選手です。特に複数のポジションを高いレベルでこなすユーティリティーバックスとして知られ、センター、スクラムハーフ、フライハーフなどでその才能を発揮しました。

プロキャリアは2001年にスーパーラグビーのブランビーズで始まりました。翌2002年には、ロンドンのトゥイッケナム・スタジアムで行われたイングランド代表戦で、わずか19歳にしてオーストラリア代表「ワラビーズ」として国際舞台にデビューを果たしました。

最初のワールドカップ出場は2003年。全7試合中6試合に出場し、プールリーグのナミビア代表戦では圧巻のハットトリックを達成しました。特に、開催国オーストラリアが準優勝を遂げた決勝のイングランド代表戦では、負傷したスティーブン・ラーカムに代わって三度ピッチに立ち、チームの善戦に貢献しました。

2004年頃からは、代表チームでは主にセンターとして活躍の場を広げます。2006年にはイングランド代表のオーストラリア遠征メンバーに選ばれましたが、怪我のため出場を見送ることに。その後、トライネーションズのニュージーランド代表「オールブラックス」戦で代表に復帰しました。

2007年からはスーパーラグビーの所属をウェスタン・フォースに移し、同年のワールドカップでは全5試合中4試合に出場、トライやゴールキックなどで合計40得点を記録しました。プールリーグのフィジー代表戦では代表戦通算50キャップを達成。この記念すべき試合を自らの2トライを含む27得点という活躍で飾りました。しかし、準々決勝で再びイングランド代表と対戦した際に負傷退場。チームもベスト8で大会を終えることとなりました。

2008年にロビー・ディーンズがワラビーズのヘッドコーチに就任すると、引退したスティーブン・ラーカムの後継者として、主にフライハーフとして起用されるようになります。チームの司令塔として新たな役割を担いました。

2010年には古巣のブランビーズへ復帰。再びキャンベラを拠点にプレーしました。

2011年、自身のワールドカップ3大会連続出場を目指しましたが、大会直前のシドニーでのサモア代表戦での敗戦後、代表メンバーから外れるという苦渋を味わいます。これを機に、オーストラリアを離れ、フランスの最高峰リーグであるトップ14の強豪RCトゥーロンへ移籍。トゥーロンでは中心選手として活躍し、2013年から2015年にかけて、ヨーロッパクラブ王者を決めるヨーロピアンラグビーチャンピオンズカップ（旧ハイネケンカップ）での前人未踏の三連覇という歴史的快挙に大きく貢献しました。

2015年、ワラビーズのマイケル・チャイカヘッドコーチが、海外でプレーする選手でも代表選出を可能とする新規定（通称「ギタウ・ルール」、正式には「ギタウズ・ロー」）を発表。これにより、マット・ギタウは代表復帰を果たしました。南アフリカ代表「スプリングボクス」とのザ・ラグビーチャンピオンシップ初戦で復帰戦を飾り、その復帰は大きな注目を集めました。

同年のワールドカップには代表として出場。全7試合中6試合でプレーしました。準々決勝のスコットランド代表戦では、キャプテンのスティーブン・ムーアと共に代表通算100キャップという金字塔を打ち立てました。決勝のオールブラックス戦では前半途中で負傷により退きましたが、この大会でのオーストラリア代表の準優勝に貢献しました。

2016年のザ・ラグビーチャンピオンシップにも招集されましたが、初戦のオールブラックス戦で再び負傷し、シーズン途中で離脱することになりました。

2017年には長年在籍したRCトゥーロンを退団。同年5月、日本のトップリーグに所属するサントリーサンゴリアスへの加入が発表されました。サントリーではレギュラーのスタンドオフとしてチームを牽引し、2017-18シーズンにはチームのトップリーグ連覇に大きく貢献。自身も同シーズンのベストフィフティーンに選出される活躍を見せました。2020年にサントリーを退団しました。

その後、2021年にはアメリカ合衆国のメジャーリーグラグビー（MLR）に参戦するLAギルティニスに加入しましたが、同年8月に一度現役引退を発表しました。しかし、翌2022年1月には再びLAギルティニスで現役復帰を果たし、その衰えを知らないプレーを見せました。

マット・ギタウは、その高いラグビースキル、特にゲームメイク能力と正確なキック、そして複数のポジションをこなすユーティリティー性で、長きにわたり世界最高峰の舞台で活躍しました。ワラビーズでの100キャップを超えるキャリア、クラブチームでの数々のタイトル獲得など、オーストラリアラグビー史に残る偉大な選手の一人です。

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