マネー・フォー・ナッシング (アルバム)

イギリスを代表するロックバンド、ダイアー・ストレイツが1988年にリリースした『マネー・フォー・ナッシング』は、彼らの活動における初の公式なベスト・アルバムとして位置づけられます。バンドの主要な楽曲を網羅し、これまでの歩みを振り返る集大成として企画されました。

このアルバムは発売された地域やフォーマットによって内容が異なりました。国際盤のLPは11曲、CDは12曲が収められ、それぞれの収録曲順も一部異なっています。特に日本のCD盤には「ソリッド・ロック」が追加され、全13曲という構成でリリースされました。日本のLP盤にも同様に「ソリッド・ロック」が収録されています。

リリース後の反響は大きく、商業的にも成功を収めました。バンドの母国であるイギリスでは、アルバム・チャートで初登場から3週にわたって首位を維持する快挙を達成しました。また、オランダのアルバム・チャートではさらに長い7週間連続で1位を獲得するなど、ヨーロッパを中心に高い人気を示しました。アルバムからの先行シングルとして「悲しきサルタン」がリリースされ、1988年11月5日付の全英シングルチャートで62位を記録しています。

以下に、日本盤CDに収録された楽曲リストと、それぞれのオリジナル・バージョンが収録されているアルバム（特記がない限りマーク・ノップラー作）を示します。

悲しきサルタン ("Sultans of Swing")：1978年発表のデビュー・アルバム『悲しきサルタン』より。
水辺へ ("Down to the Waterline")：同じく『悲しきサルタン』よりの選曲。
ポートベロの少女 (ライヴ) ("Portobello Belle (Live)")：このベスト盤のために収録された未発表ライヴ音源。原曲は1979年のアルバム『コミュニケ』に収録。
トゥイスティング・バイ・ザ・プール (リミックス) ("Twisting by the Pool (Remix)")：1983年のEP『ExtendedancEPlay』収録曲をリミックスしたもの。
トンネル・オブ・ラヴ ("Tunnel of Love")：1980年のアルバム『メイキング・ムーヴィーズ』より（マーク・ノップラー、リチャード・ロジャース、オスカー・ハマースタイン2世共作）。
ロミオとジュリエット ("Romeo and Juliet")：同じく『メイキング・ムーヴィーズ』からの代表曲。
ソリッド・ロック ("Solid Rock")：『メイキング・ムーヴィーズ』に収録されていた楽曲で、日本盤のみにボーナス・トラックとして追加された。
行かないで… ("Where Do You Think You're Going?")：1979年のアルバム『コミュニケ』より収録。
ウォーク・オブ・ライフ ("Walk of Life")：世界的な成功を収めた1985年のアルバム『ブラザーズ・イン・アームス』からのヒット曲。
哀しみのダイアリー ("Private Investigations")：1982年のアルバム『ラヴ・オーヴァー・ゴールド』からの重厚な楽曲。
テレグラフ・ロード (ライヴ) ("Telegraph Road (Live)")：1984年のライヴ・アルバム『アルケミィ〜ダイアー・ストレイツ・ライヴ』より。スタジオ原曲は『ラヴ・オーヴァー・ゴールド』に収録。
マネー・フォー・ナッシング ("Money for Nothing")：『ブラザーズ・イン・アームス』からの彼らを代表する楽曲の一つ（マーク・ノップラー、スティング共作）。
* ブラザーズ・イン・アームス ("Brother in Arms")：『ブラザーズ・イン・アームス』のタイトル曲であり、感動的な名曲。

このベスト・アルバムは、ダイアー・ストレイツの初期から中期にかけてのキャリアを網羅しており、彼らの多様な音楽性と時代ごとのサウンドの変化を一覧できる入門的な一枚としても機能しました。その商業的成功は、バンドの確立された地位を再確認させるものとなりました。

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