マミチョグ

マミチョグ（Mummichog）の詳細

マミチョグ（学名：Fundulus heteroclitus）は、カダヤシ目フンデュルス科に属する小型の汽水・海水魚です。北米大陸の大西洋岸に広く分布し、その驚異的な環境適応力と多様な生態から、科学研究における重要なモデル生物として利用されています。

分類と名称

マミチョグは、フンデュルス属（Fundulus）に分類されます。属名の「Fundulus」はラテン語で「底」を意味し、水底近くで生活する生態を表しています。種小名の「heteroclitus」は「不規則な」「異常な」という意味を持ちます。1766年にカール・フォン・リンネによって初記載され、そのタイプ標本はサウスカロライナ州チャールストンで得られました。

マミチョグには、2つの亜種が存在します。北部に生息するF. h. heteroclitusと、南部に生息するF. h. macrolepidotusです。また、マミチョグという英名は、インディアンのナラガンセット族の言葉で「群れて移動する」という意味に由来しており、その群れを作る習性を表しています。

形態

マミチョグは、やや厚みのある紡錘形の体型をしており、太い尾柄部を持ちます。通常は全長7.5〜9cm程度ですが、最大で15cmに達することもあります。口は上向きに開き、下顎が上顎よりも突出しています。背鰭、臀鰭、胸鰭の軟条数はそれぞれ10-13本、9-12本、16-20本です。オスはメスよりも大きな背鰭と臀鰭を持ちます。

体色は変化に富み、灰色やオリーブグリーンが基本ですが、繁殖期にはオスの体色が濃くなり、体側面に銀色の横帯が現れます。メスはオスよりも体色が薄く、横帯や斑点が目立たないことが多いです。

識別

マミチョグの2亜種は、形態や遺伝的なわずかな差異で識別できます。また、北部に生息する亜種は卵殻に粘着糸があるのに対し、南部に生息する亜種にはそれがありません。

マミチョグは、同属のF. diaphanusとよく似ていますが、F. diaphanusはより淡水域に生息し、体側面の模様や鰓耙数で識別できます。

分布

マミチョグは、北米大陸の大西洋沿岸に広く分布しています。北はガスペ半島から南はフロリダ半島北東部まで、海岸域から汽水域に生息します。1970年代以降には、ポルトガルやスペイン南東部などにも移入分布が確認されており、地中海盆地西部にも分布を広げています。釣り餌として淡水域に放流され、定着した事例も報告されています。

食性

マミチョグは雑食性で、珪藻、甲殻類、軟体動物、魚卵、小魚、昆虫の幼虫、アマモなどを食べます。飼育下では、市販の配合飼料でも問題なく生育します。

生理

マミチョグは、非常に高い環境耐性を持つことで知られています。6〜35℃の水温、広い塩分濃度、低酸素濃度にも耐えることができます。また、メチル水銀、クロルデコン、ダイオキシンなどの有害物質に対する耐性も持つ個体群が存在します。これらの特性は、環境汚染の研究や生理学的な研究に活用されています。

行動

マミチョグは、群れを作って遊泳します。冬には、泥の中に潜って冬越しをします。また、潮溜まりに取り残された際には、泥の中に潜って干潮の間をやり過ごします。実験室では、概日リズムや半月齢周期に従った行動の変化が確認されています。

繁殖行動

産卵は春から秋にかけて行われ、満月や新月の満潮時に盛んになります。オスは求愛行動としてメスを追いかけ回し、メスは尾鰭をはためかせて誘います。オスとメスは体を密着させて卵と精子を放出します。卵は粘着性があり、植物や貝殻などに産み付けられ、大潮の際に再び水没するまで湿った空気中で発生します。

寄生虫

マミチョグは、吸虫などの様々な寄生虫に感染することが知られています。これらの寄生虫の中には、宿主の行動を操るものも存在し、寄生虫学の研究対象としても興味深い存在です。

人間との関係

マミチョグは、ボウフラを捕食するため、蚊の駆除を目的とした生物的防除に利用されることがあります。また、釣り餌としても広く利用されています。さらに、その高い環境耐性から、様々な科学研究におけるモデル生物として、生理学、毒性学、発生学、宇宙生物学など、多岐にわたる分野で重要な役割を果たしています。特に1973年のスカイラブ計画では宇宙に送られ、宇宙空間での行動や発生に関する研究に貢献しました。これにより、マミチョグは宇宙に到達した最初の魚類として知られています。

マミチョグは、その適応力と多様な側面から、自然科学の多くの分野で注目される存在です。1000文字以上1400文字程度。

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