マヨルカ王国

マヨルカ王国：地中海の消えゆく王国

マヨルカ王国（スペイン語: Reino de Mallorca）は、13世紀から14世紀にかけて、地中海に浮かぶマヨルカ島を中心としたバレアレス諸島に存在した王国です。その歴史は、建国者ジャウメ1世の野望、アラゴン王国との対立、そして王国の滅亡へと向かう悲劇的な物語です。

建国：ジャウメ1世の遺産

マヨルカ王国は、アラゴン国王ジャウメ1世（征服王）によって建国されました。彼はイスラム勢力からの領土奪還に尽力し、1229年からバレアレス諸島への侵攻を開始。マヨルカ島、メノルカ島、イビサ島を次々と制圧しました。ジャウメ1世は、後妻ヨラーンとの間に生まれた息子ハイメのために、マヨルカの領土を相続させることを決めます。1276年にジャウメ1世が死去すると、アラゴン王位は嫡男ペドロ（ペドロ3世）が継承しましたが、マヨルカ王国は遺言に従いハイメに相続され、ジャウメ2世として即位しました。

マヨルカ王国の主要な構成要素は、バレアレス諸島の島々（マヨルカ島、メノルカ島、イビサ島、フォルメンテラ島）でした。しかし、島嶼部以外にも、ルシヨン伯領、セルダーニュ伯領、オクシタニア地方のモンペリエ、オーヴェルニュのCarlat子爵領、Aumelas男爵領などを領有していました。これらの飛び地は、フランス王国とアラゴン王国の間に位置し、領土紛争の火種となる運命を背負っていました。

アラゴンとの対立：ジャウメ2世の苦悩

ジャウメ2世は、宗主国であるアラゴンの王ペドロ3世と対立し、アラゴンへの従属を拒みました。しかし、社会制度が整っていないマヨルカ王国はアラゴンの圧力に屈し、1279年のペルピニャン条約でアラゴン王国の管轄下に置かれることになります。ジャウメ2世は、ローマ教皇、フランス王と連合してペドロ3世に対抗しようと試みますが、Formigues島の戦いで敗北。ペドロ3世によるバレアレス諸島への侵攻を招き、マヨルカ王国は島嶼部の領土を失いました。

1295年、アナーニ条約によってバレアレス諸島はジャウメ2世に返還されますが、マヨルカ王国はアラゴンの強い管轄下に置かれたままです。ジャウメ2世はアラゴンの宗主権を認め、内政に専念。都市の再建、農業の奨励、経済の発展に尽力しました。

王国の滅亡：ジャウメ3世の悲劇

1324年、ジャウメ3世が王位を継承しますが、幼少のため摂政協議会が必要となりました。アラゴン王からの王位返還要求、サルデーニャからの侵攻を防ぐための莫大な負債など、困難な状況が続きます。アラゴンの影響下で、ジャウメ3世はアラゴン王女コンスタンサを妃に迎えざるを得ませんでした。サルデーニャの領有権をめぐるアラゴンとジェノヴァの戦争に巻き込まれ、経済的な打撃を受けます。1341年、アラゴン王ペドロ4世はマヨルカ王国との国交を断絶し、1343年にバレアレス諸島へ侵攻。1344年にはルシヨン、セルダーニュにも侵入し、マヨルカ王国は事実上滅亡しました。

ジャウメ3世は、フランスに残るわずかな領土を守るために戦いますが、1349年のリュクマヨールの戦いで敗北し戦死。マヨルカ王国は完全にアラゴン王国に併合されました。

その後の王家

ジャウメ3世の子ジャウメ4世は、アラゴン王国軍に捕らえられ幽閉されますが、脱出してナポリ女王ジョヴァンナ1世を頼り、結婚。「マヨルカ王」を称して失地回復を図りますが、エンリケ2世の軍に捕らえられ、解放後も故地回復に失敗。1375年に失意のうちに病死しました。

ジャウメ4世の死後、妹イザベラが王位を継承しますが、1406年に死去し、マヨルカ王家は断絶しました。

マヨルカ王国の終焉

マヨルカ王国は、その短い歴史の中で、大国間の紛争に翻弄され、翻弄され続けた悲劇の王国でした。しかし、その存在は、地中海の歴史に確かに刻まれ、今もなお、その足跡をたどることができます。

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