マリ共和国の地方行政区画

マリ共和国は、2023年2月22日以降、19の州（Région）と1つの特別区であるバマコ特別区に分けられています。各州はさらに156の圏（Cercle）に区分され、その下に466の郡（arrondissement）、そして最小単位として819のコミューン（Commune）が存在します。

地方自治の歴史

フランス領スーダン時代は、全土が圏に分けられ、フランス本国の管轄下に置かれていました。植民地行政官は圏に対する絶対的な権限を持ち、定期的な「巡察」を通じて植民地全体を支配しました。一方、各地に存在した伝統的な「国家」はカントンに再編され、伝統的指導者がカントンの長に任命されることで、地方行政の基盤として植民地支配を補助しました。

1911年1月1日、植民地総督令によりコミューンの設置が計画され、1919年1月1日よりバマコとカイ、1920年1月1日よりモプティ・コミューンが発足しました。コミューンの市長は総督が任命していました。その後、1953年にセグー、1954年にシカソ・コミューンが創設されています。

1955年11月18日、法律N°55-1489によってアフリカ植民地に完全に自立したコミューン（plein exercice）の創設が認められました。この法律に基づき、1956年にはバマコ、カイ、セグー、モプティが完全なコミューンに改編され、1958年にはキタ、カティ、クリコロ、クーティアラ、サン、トンブクトゥ、ガオが準コミューン（moyen exercice）として創設されました。完全なコミューンは市議会が市長を選出し、法人格と財政自主権を持っていましたが、準コミューンは植民地政府が市長を任命しました。

圏番号はフランス領西アフリカ植民地全体で通し番号となっており、スーダン植民地には94番以降が割り当てられています。ネマ圏は1954年にモーリタニア植民地（現在のモーリタニア）に割譲されました。

スーダン共和国（1958年 - 1960年）

フランス共同体内に成立したスーダン共和国は、1960年6月7日に新たな地方行政法（N°60-5/AL-RS）を採択し、行政区画を州-圏-郡-コミューン-村とし、部族地域にはフラクスィオンを設置することを規定しました。また同日に採択された別の法律では、州を民事的人格と財政的自治を与えられた公的機関と定義しました。

スーダン共和国はセネガルと共にマリ連邦として1960年6月20日にフランスから独立しましたが、連邦はセネガルの脱退によって2か月で瓦解し、同年9月22日にスーダン共和国はマリ共和国に改称しました。連邦消滅時、スーダン共和国には6州、6圏、13コミューンがありました。

第一共和制（1960年 - 1968年）

独立後、モディボ・ケイタ政権は平等主義に基づく地方政治の刷新に取り組みました。1966年3月2日、N°66-9/AN-RMによって2種類のコミューンは統合され単一のコミューンとなり、州は経済地域に改編され政府の任命した特別委員会が統治しました。カントンは郡に置き換えられ、圏の数は6から41まで増加しました。1968年11月19日の政権崩壊時点でマリ共和国には6経済地域、41圏、269郡、13コミューンが存在しました。

ムーサ・トラオレ政権下（1968年 - 1991年）

1968年11月19日、軍事クーデターで政権を奪取したムーサ・トラオレ率いる国民解放軍事委員会は、当初ケイタ政権の行政区画を保持しました。1977年7月12日、新たな領土および行政改革法（N°77 44/CMLN）が採択され、経済地域は地方自治体の州に戻されました。国土北部を占めていたガオ州からトンブクトゥ州が分立し、バマコ州は特別な地位にあるバマコ特別区とクリコロ州に再編されました。また郡はコミューンに昇格する権利を得ましたが、1991年まで昇格した郡はありませんでした。

1982年、N°82-49/AN-RMによってN°77 44/CMLNは改正され、州、圏、郡に評議会が設置されました。評議会議員の任期は3年で、評議会の決定によって最長1年間延長することができました。また、同年に14番目のコミューンとしてブグニが創設されました。

国民救済移行委員会（1991年 - 1992年）

1991年、ガオ州からキダル州が分立しました。民政移行期にバナンバ、ディオイラ、バンディアガラ、ニオロ・デュ・サヘル、ジェンネがコミューンとなり、数は19になりました。

第三共和制（1992年以降）

1992年6月8日にアルファ・ウマル・コナレが大統領に就任した時には8州、46圏、286郡、19コミューンがありました。コナレ大統領は地方分権を促進し、1996年には国土全域にコミューンが設置されました。これによりコミューンは701まで大きく増加し、直ぐに2コミューンが新たに創設されたことで703コミューンとなりました。また圏が3つ追加され、数は49圏となりました。

次いで大統領となったアマドゥ・トゥマニ・トゥーレは地方行政の限界を感じ、2011年末に州および圏の増設を発表しました。

現在の行政区画

州

州（Région）は第一級行政区画で、19つに区分されます。州は州議会によって管理され、州議会議員はコミューン議員から選出されます。

2011年12月7日、アマドゥ・トゥマニ・トゥーレ政権は閣僚理事会で既存の8州を5年間で段階的に分割し、最終的に19州とする方針を決定しました。最初に選ばれたのはタウデニ州とメナカ州で、12月14日に国民議会で2州を創設する法案が採択されました。

2023年2月22日、新たな地方行政法が採択され、19州とバマコ特別区で構成されることが規定されました。州は2012年の法案を踏襲しており、圏・郡が設置されていなかった9州にも新たに行政区画が設定されました。

首都バマコは特別区として州と同等の扱いを受けます。2023年3月13日に公布された「バマコ特別区の地位に関する法案（N°2023-005）」によると、バマコ特別区は7つの行政区（Arrondissement）から成り、圏と郡は設置されていません。2023年までは7つのコミューンで構成されていましたが、N°2023-005によってコミューンは廃され、単一の自治体へ移行しました。

圏

圏（cercle）は第二級行政区画で、幾つかのコミューンが集まって構成し、法人格が付与され独立した財政を有する自治体です。マリ共和国には圏が156存在しています。圏議会議員はコミューン議員から選出され5年間の任期となっています。

圏には、予算管理、環境保護、領域管理、重要施設の管理、アグロフォレストリー、伝統・観光活動の組織、機関・管理業務の組織化、建設・供給市場の管理、税基準・税率の固定、資本介入、姉妹都市プロジェクト、法令適用などが主な業務として定められています。

2023年に創設された圏の中には、住民が遊牧民であるため定住人口が極端に少ない「幽霊圏」の存在が指摘されています。

郡

郡（arrondissement）は、圏とコミューンの間に位置する行政区画ですが、圏やコミューンとは異なり、行政権および行政当局を持ちません。郡は単に土地の境界として存在し、管理業務を円滑にするために区分されたものです。一部にはコミューンと郡が一致する地域も存在します。

コミューン

コミューン（Commune）は第三級行政区画で、国内に819のコミューンが存在しています。これには都市となっている一級コミューンと、新コミューン（都市的コミューンと農村コミューン）が含まれます。

コミューンは直接普通選挙によって選出されたコミューン議会によって運営され、コミューンの首長と議員は被選挙権を持つ地元民から選出されます。コミューンの専門分野には児童教育、識字、一次健康管理や出産、地元の重要インフラストラクチャーの管理および環境などが含まれます。

フラクスィオン

フラクスィオン（Fraction）は、主に村落に属する住居の断片を構成するもので、遊牧生活と住居の不安定な形態のために見られます。フラクスィオンはマリ北部で非常に多く、遊牧民達は村落または水源のそばに即座に設置して家族を代表します。他の地方においてフラクスィオンは生産活動のための自家設備（農業や畜産）が実際の姿であり、主に旱魃の結果、北部地方から流入してきたフラニ族の居住者たちの間で作られています。

フラクスィオンはコミューンに含まれており、遊牧民の人口を再編成します。

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