マルクス・フルウィウス・フラックス (紀元前125年の執政官)

マルクス・フルウィウス・フラックスは、共和政ローマにおいて紀元前125年に執政官を務めた政治家であり、軍人です。グラックス兄弟の盟友として知られ、ポプラレス（民衆派）の初期の重要人物として活躍しました。

生い立ちと出自

フラックスは、プレブス（平民）出身のフルウィウス氏族に属します。フルウィウス氏族は紀元前4世紀中頃にトゥスクルムからローマへ移住し、紀元前322年にはルキウス・フルウィウス・コルウスが氏族初の執政官となりました。フラックスというコグノーメン（家族名）は、紀元前264年に執政官を務めたマルクス・フルウィウス・フラックスに由来し、彼は本記事のフラックスの曽祖父にあたります。祖父クィントゥス・フルウィウス・フラックスは執政官を4度務めましたが、父マルクスは紀元前180年にトリブヌス・ミリトゥム（軍事トリブヌス）を務めたものの、不祥事により元老院から追放され、高位の官職に就くことはありませんでした。叔父には、紀元前179年に兄弟で執政官となったクィントゥス・フルウィウス・フラックスとルキウス・マンリウス・アキディヌス・フルウィアヌスがいます。

政治家としての経歴

紀元前130年、フラックスはティベリウス・グラックス（グラックス兄）の後を継ぎ、同盟都市間の土地分配問題解決のため、公有地の再編（農地法）を担当しました。この政策によって彼は民衆からの支持を得て、紀元前125年には執政官に選出されました。しかし、元老院は彼の改革を阻止するため、サリエス（ガリア人の一派）の侵略からマッシリア（現在のマルセイユ）を防衛するよう命じ、彼をローマから遠ざけました。フラックスはガリア・トランサルピナ（アルプス山脈のローマ側から見て反対側）のリグリア人に対して勝利を収め、紀元前123年にローマへ帰還し、凱旋式を挙行しました。

紀元前122年には護民官に就任し、同僚のガイウス・グラックス（グラックス弟）を支援して、農地法の復活とイタリア本土の住民に対するローマ市民権付与条件の改定を試みました。この市民権問題は、その後のローマにおける大きな政治的争点となりました。また、執政官経験者が護民官に就任したのは、フラックスが初めてでした。

フラックスは、カルタゴの跡地に植民都市コロニア・ユノニアの建設を開始しました。翌紀元前121年の護民官選挙にも立候補しましたが、オプティマテス（門閥派）は、紀元前125年に提案された政策が未だ実施されていないこと、カルタゴ植民地建設に関する疑惑、さらには小スキピオ暗殺への関与疑惑などを理由に彼を攻撃し、フラックスとグラックスは共に落選しました。これに対し、フラックスはアウェンティヌスの丘で大規模な抗議運動を展開しましたが、元老院は史上初のセナトゥス・コンスルトゥム・ウルティムム（元老院最終勧告）を発令し、これに基づいて執政官ルキウス・オピミウスが武力鎮圧を行い、多数の死傷者が出ました。フラックスも殺害され（あるいは逮捕後処刑）、グラックスは自殺しました。

プルタルコスはフラックスを生まれながらの扇動者として描写していますが、キケロは彼を雄弁家ではあるものの穏健であり、弁舌家というよりはむしろ文筆家であると評しています。

子孫

フラックスには少なくとも2人の息子がいました。長男マルクスは、反乱失敗後に隠れていたところを発見され処刑されました。次男クィントゥス・フルウィウス・フラックスはまだ若く、抗議運動の際に父と兄から元老院への使者として派遣されただけでしたが、やはり処刑されました。ただし、オピミウスはクィントゥスに死刑の方法を選ばせたと言われています。娘の一人は、紀元前90年の執政官ルキウス・ユリウス・カエサルと結婚し、カエサルの叔母となりました。ルキウスの息子ルキウス・ユリウス・カエサル、すなわちフラックスの曾孫も紀元前64年に執政官を務めています。

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