マルタの軍事

マルタの軍事

マルタは地中海の中央に位置する島国であり、その地理的な特性から、歴史的に重要な軍事的拠点となってきました。この記事では、マルタの軍事の概要、歴史、組織、装備について解説します。

歴史的背景

マルタは地中海の東西交通をコントロールできる戦略的な要衝であり、古来より様々な勢力の支配下に入ってきました。

中世：1565年には、マルタ騎士団とオスマン帝国の間でマルタ包囲戦が行われました。
18世紀：1798年には、ナポレオン・ボナパルト率いるフランス軍がエジプト・シリア戦役の途中でマルタを占領しました。
19世紀：1800年にイギリス軍がマルタを占領し、1814年にイギリス領となりました。

イギリスはマルタに地中海艦隊を配備し、通商路の保護と権益確保にあたりました。第一次世界大戦では、マルタは船団護衛部隊の基地として連合国各国に利用されました。1930年代後半、ヨーロッパの緊張が高まると、地中海艦隊の主力はイタリアからの空襲を避けるため、エジプトのアレクサンドリアへ移動しました。

第二次世界大戦中、マルタは地中海の東西交通を維持し、イタリアとリビア間の補給路を妨害する重要な拠点となりました。特に戦争前半には、航空、水上、潜水艦部隊が連携し、北アフリカに展開する枢軸軍への補給を阻止しました。そのため、マルタはイタリア空軍とドイツ空軍による激しい空襲にさらされました。枢軸国はマルタ占領作戦（ヘラクレス作戦）を計画しましたが、実行には至りませんでした。連合国によるマルタへの補給も困難を極め、ヴィガラス作戦、ハープーン作戦、ペデスタル作戦などの補給作戦が展開されました。1942年には、イギリス王室からマルタ島住民の勇敢さを称え、勲章が贈られました。1943年、連合軍の攻勢によりマルタの包囲は解消されました。

1964年、マルタはイギリスから独立し、1974年に共和制へと移行しました。イギリス軍の一部はマルタ軍として再編・設立され、1979年にはイギリス軍が完全に撤退しました。

マルタ軍の概要

マルタ軍（Armed Forces of Malta, AFM）は、陸、海、空の戦力を有し、約1,600名の兵員を擁する志願制の軍隊です。マルタは北大西洋条約機構（NATO）などの軍事同盟には加盟していませんが、親西欧的な安全保障政策を採用しています。1995年にNATOの平和のためのパートナーシップに参加しましたが、1996年に一時脱退し、2008年に復帰しています。

組織

マルタ軍は、3個連隊（中隊規模）と航空部隊、船舶部隊で構成されています。

第1連隊：歩兵2個中隊と特殊部隊1個中隊を基幹とする主力部隊です。
第3連隊：工兵部隊です。
第4連隊：本部中隊、指揮・統制・通信・情報中隊で構成されています。
航空部隊：哨戒および捜索救難を行う固定翼機やヘリコプターを装備しています。
船舶部隊：小型哨戒艇などを装備しています。

歴史

独立以前は、歩兵と砲兵の各1個連隊が駐留イギリス陸軍の主力でした。1800年には、イギリスの支援のもと、マルタ民兵連隊が設立されました。歩兵部隊は、財政上の理由などから改編と廃止を繰り返しましたが、1931年に本国の支援により国王マルタ連隊（King's Own Malta Regiment）となりました。設立時は1個大隊でしたが、大戦中には最大4個大隊編成となりました。大戦後に縮小され、1972年に解散しました。砲兵連隊は、民兵部隊の一部を改編し、1861年に設立されました。この砲兵連隊（1 Regiment Royal Malta Artillery）を1974年に改編し、マルタ軍が設立されました。

本部

マルタ軍の本部（HQ AFM）は、陸上部隊3個連隊、航空部隊、船舶部隊を統括します。主要な部局は以下の通りです。

作戦・訓練局
管理・人事局
後方支援局
欧州連合防衛政策局
広報室
情報室
法務部
監査・調査局

装備

マルタ軍は、以下の装備を使用しています。

ベレッタM92
AK-47
ベレッタAR70/90|ベレッタAR70_90
SIG MCX (特殊部隊)
ベレッタARX160 (特殊部隊)
FN FAL (儀礼用)
H&K MP5
ベレッタM12
L96A1
FN ミニミ
PK (機関銃)
FN MAG
RPG-7
ボフォース40mm対空機関砲

外部リンク

Armed Forces of Malta
アヴァランチプレス社による解説(en)

まとめ

マルタの軍事は、その地政学的な重要性と歴史的背景から、複雑な様相を呈しています。マルタ軍は小規模ながらも、国の安全保障と国際的な平和協力に貢献しています。

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